第2話 最初の御神託?なのかな?・・
特に神様から次の御神託を受けることはなかった。
そして日常も別段変わらなかった。
そんな有る日、会社で仕事をしていた時だった。
つい、仕事の手をとめ物思いにふけっていた。
友人にご御神託の件を相談しようか・・。
いや、辞めた方がいいか。
巫女ならぬ男巫なんて言ったら、
何それ? と笑われるだけだろう。
は〜、とため息が出た。
それを見計らったかのように課長に突然呼ばれた。
「拓也! ちょっと来い!」
「はい!」
なんか
渋々課長席に向った。
「お前、暇そうだな」
「あ、いえ、今、実験データの精査中ですが」
「ため息を吐きながらか?」
「あ、それは…」
「それでだ、その仕事、菅原に引き継がせろ」
「え?」
「パスポートの期限は、まだ有効だよな」
嫌な予感がした。
半年前、突然、タイへ出張命令が出た。
工場立ち上げの人員として1週間。
しかし、3週間タイに滞在するはめになった…
この海外出張は初めてで、パスポートを取得していた。
「今週末、タイへ出張な。」
「え!」
「前回と同じだ、よろしく」
「あ…」
「詳細は先程メールした。読んどけ」
「…」
「で、これが飛行機のチケットな」
「あの、拒否権は?」
「無い」
「ですよね〜・・・」
「ヨロシクな」
「…はい」
は〜、とため息を吐きながら自席に座る。
「出張、ね〜」
『ワシが取り計らった』
「ええええ!!!」
「どうした! 拓也!」
う、課長…
「あ、いえ、あの…」
『大声を出すものでは無いぞ』
心で叫ぶ、
神様のせいでしょ!
『いや、叫んだのはお前だ』
「…」
神様、周りに説明してよ! 神と話している最中だと!
『お主は馬と鹿か?』
?…
『御神託が巫女以外に聞こえたと聞いたことあるのか?』
?!
そうか…
職場の皆んなには神様の声は聞けないんだ…
「? 拓也! おい! 拓也? どうした?」
課長が怪訝な顔をしている。
課長の顔、面白いのだがそれどころじゃない。
まさか神様と話していたとは言えないよな…
そんなことを言ったら病院へ行け! だよな
さて、どうやってごまかそうか・・
出張で困ることと言えば・・
あ! パスポート関連か・・ならば・・
「いや、ちょっと…」
「?」
「パスポートを実家に置いてきてしまいました…
実家の者だとどこにあるか分からないと思います。
取りに行くには会社を休まないといけないですし、
どうしましょう、課長?」
嘘である。
パスポートはアパートにある。
「馬鹿者! 休暇をやる! 取りに行け、今すぐ!」
「はい!! すみません。」
そう言って早退けした。
帰宅途中の電車の中で、神が話しかけてきた。
『これ、嘘はいかんぞ』
誰のせいで嘘をついたと思っているんだか・・
『神のせいにするで無い』
「そういえば…何で心で考えた事がわかるの」
『神だからわかる』
「え? 俺にプライバシーは?』
『そちは男巫であろう?』
「あ、え、まあ強制的に」
『何? 不満か?』
「ええ、まあ。 海外出張はうれしく無いですね。
そういう事があるなら辞退したいのですが?」
『ほう、嫌か?』
「嫌、というわけでは…面倒なだけです」
『神の仕事がか?』
「…」
『まあ、良いぞ解任しても』
「本当ですか!」
『うむ、ただ神の加護は今後無くなるが』
「え、それって…」
『神に協力しないのだから当然だ』
「加護が無くなると、どうなりますか?」
『不幸になるだろうな〜』
「…それって…、脅迫では?」
『何を言っておる。
脅迫では無いぞ。
神とはそのようなもの。
だから祟り神も居ろう?』
「げっ!」
『げっ、とはなんだ!』
「あ、すみません」
『で、辞退するのじゃな男巫を』
「いえ! 男巫をさせて下さい。」
『宜しい』
「ところでタイで何をすればいいのでしょう」
『タイに行けばわかる』
「え〜、今教えてくださいよ」
『神には神の都合がある、わがままを言うものでは無い』
? 我儘?
これって、わがまま、なの?
『不満か、なら男巫をやめ・・』
「わかりました!」
『そうか、なら宜しい』
ふと視線を感じ、電車内を見渡す。
乗客がヒソヒソと話しながら、こちらを見ている。
「お母さん、あの人、独り言やめたよ」
「これ! 知らんふりしなさい! ほれ、向こうに行くよ!」
え? しまった神の声は周りには聞こえないんだ。
隣の女子高生は冷たい目で見ている。
それも身を避けて…
俺、不審者扱い?
神様! 何とかして!
神様?
もしも〜し…
あの、神様?
シカトか!?
いたたまれず次の駅で降りた。
プラットフォームでため息をつく・・
神様、まさか疫病神では?
『馬鹿者!! 違うわ!』
「うわ! すみません!!」
「きゃ!」
「あ、すみません…」
う、隣にいた女性が驚いて悲鳴を上げた。
厄日だ…
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