御神託
キャットウォーク
第1話 巫女ならぬ男巫に任命されました
それは冬の出来事だった。
コタツに入り一人でTVを何となく見ていた。
「は〜…つまらない番組しかやってない…」
そう呟いてTVを消したのは拓也 28才。
♂ 独身 乙女座 である。
目を瞑ると眠くなってきた。
何もする事は無いし・・・
このまま
決めたとたんに意識が遠のく。
そして夢を見た。
ふんわりとした物を踏みしめている。
足元を見た。
霧のようなものが漂っている。
足首から先は見えない。
目線を上げ周りを見渡す。
白一色の広い空間だった。
そう思った瞬間、強烈な光が現れた。
思わず手で目を覆い目を瞑る。
とても見ていられない。
やがて光が少しだけ弱くなり
まばゆい光が目の前で色を変えながら光っていた。
光の形はつかめない。
人の形に見えたり、勾玉のように見えたり…
形が絶えず変化している。
・・・・これは・・
ラノベだと、ここで女神様が出てきて転生を告げるのだが…
まさかね?
そう思った瞬間に威厳のある声が聞こえた
『神託を授ける』
声は耳から聞こえたのではない…
耳からではないのに聞こえる…
何これ・・
頭の中で
それに御神託?
夢・・。
うん、夢だ・・・
初めてだ、こんな夢は・・・
ラノベの読み過ぎかな・・
『これは夢ではない。』
荘厳な声がそう告げる。
ん? 夢の中で夢を否定する?
自分の夢に自分で突っ込みを入れている?
それも自分と、神の一人二役で・・
なんか…馬鹿みたい…
「アハハハ! 傑作だ!」
思わず笑ってしまった。
『夢ではない。』
また厳かな声が聞こえた。
「?」
『ここは神との対面の儀の部屋だ。』
「?!」
対面の義?
何言ってんだ?
まあ夢は突拍子もないものだ。
『夢では無いと言っておろう!』
荘厳な声に若干怒りが含まれた。
そして、別の
『本当に近頃の人間は…』
『そうじゃのう〜、困ったものよ』
『
『
『
『スサノオよ、やめておけ』
『お主が躾したら大変な事となる。』
『そうかな〜、愛の
『ウズメよ、何を踊っておる?』
『だって、ちょっと太っちゃって』
『そうか? 良いプロポーションじゃが?』
『スクナビコ様のエッチ!』
『いや、パワハラだよ。』
若い複数の男女の声だ。
会話自体は軽いのりで話しているのだが・・
荘厳で凜とした
そして聞いていると何故か姿勢がただされる。
そればかりではない、緊張し、背中に冷や汗がでる。
会話はさらに続いた。
『いつの間に来たのですか?』
『最初から、そっと後ろについて来たが?』
『お忙しいのに何故?』
『面白そうじゃからのう』
『他の方々は?』
『天照様に面白いものが見れると誘われて』
『右に同じ~!』
『暇だったし』
『久々の対面の義だからね』
『ついてこいと言われた~』
『はぁ~・・あなた方は・・
この場所は、高貴な方々が来るべき所ではございません。』
『いいではないか猿田の彦よ。』
『良くありません!』
『おやおや、仕方ないのう…
皆のもの下がろうかのう』
『御意!』
突然静かになる。
どうやら賑やかな面々は去ったようだ・・
何だったのだろうか今のは…
声だけで姿が見えない。
あるのは目の前の色を変え続ける光、ただ一つ。
『さて拓也、神託を授ける。』
「へ?」
『へ、ではない!!』
「す、すみません!!」
強烈な威圧を感じ思わず謝る。
気がつくと土下座をしていた。
『おや、すまぬ。
神気が強かったか。
最近は神気を感じぬ人間が多くて、
抑えるのを忘れていた。』
「…」
『まあ、そう
「はい。」
『そちに
「へ? おとこみこ」
『そうだ、男の
「…何ですか男巫とは?」
『字の通りだが?』
「神様の啓示を受ける、あの巫女…」
『そうだ』
「なぜ男?」
『・・・』
「? あの…ひょっとして深い考え無しとか?」
『では
「えっ! ちょっと!!」
視界が真っ白になり、やがて暗くなった。
そこで目が覚めた。
なんだったんだろう・・
夢にしては妙に実感がある。
「今のは、夢だったんだよね?・・」
『夢では無いといっただろう!』
「す、すみません!」
ゴン!
土下座しようとして、頭をコタツにぶつけた。
「いてっ!」
目から火花が飛んだ。
信じられない・・
目を覚ましても、神様の声が聞こえた。
いや、幻聴かもしれない。
「仕事のしすぎで疲れているのかな・・」
『だから、夢ではないと・・何度言えばわかる』
「・・・夢ではない、みたいです」
『やっと分かったか・・』
「ところで男巫とは、結局何をするんですか?」
「おいおい分かるであろうよ」
「はあ・・」
『今日は、休むがよい』
「・・はい、そうします。」
確かに、夢・・ではなく、神様との対面だったようだ。
神様との会話は精神的に消耗するのかもしれない。
疲労感を覚え、ベッドに入った。
入ると直ぐに睡魔に襲われ、夢をみることなく朝を迎えた。
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