第3話 拓也

拓也は自分の星座が気に喰わない。


生まれた月で星座が決まるのは構わない。

ただ、何で男の俺が乙女座なんだ?


ギリシャ神話なんて知ったこっちゃない、

だったら男座を作れって言いたい。

男女平等均等雇用法ならオナベ座、オカマ座も必要だろう?

本当にギリシャ人は…と、なけなしの知識を総動員して批判した。


ただし、である…

星占いは好きである。

朝、出かける前のTVの星占いがお気に入りである。

毎朝出勤前に見るのだが・・

この星占いにラッキーアイテムなるものがある。

それを身につけたり、食べたりすると良いことがある、らしい。

この、ラッキーアイテム・・くだらない、そう思っている。


しかしケチを付けながら従ってしまう性格だ。

この前のラッキーアイテムはパフェだった。

この時、しっかりと食後に食べていた。3食ともにである。


まあ、そういう性格だからか不明だが彼女はいない。

だから、彼女が欲しい。

いや、欲しいなんてものじゃない。

理由は明快単純である。


友人は結婚していたり熱烈恋愛中である。


彼らは昔、女なんていらん。

お前と遊ぶのが楽しい。


なんて言っていた友人達が、である。


彼女のいない奴が、一人減り、二人減り、

やがて気がつけば彼だけになっていた。

寂しくなった拓也は彼女獲得の努力を始めた。

コンパに出席したり、友人に紹介を頼んだりした。


しかし高校、大学と技術系を選び、会社も技術者…

兄弟も男兄弟しかいない。

要は女性とあまり接していないのである。


女性と何を話したらいいのかわからないのだ。

何か話そうと焦ってしまい、女性に引かれる始末である。


ただインターネット、携帯のチャットではモテた。

性格が良く、優しく、人の話に耳をかたむけるからだ。


リアルの拓也は、マスクは悪くは無い。

ほどよい筋肉の付いた痩せ形で身長は170はある。

会社も一部上場企業であった。

もし女性へのリアルでの会話がうまければモテても不思議はないのだが…


そういう彼であったが、

結婚相談所や出会い系有料サイトは避けた。

何かお金で解決しているように思えたからだ。


世の中難しいものだ。


そんな拓也であるが神様は信じていた。

旅行や、ツーリング、散歩などで神社があるとお参りした。

家族の健康や、旅のご加護を願って。

どこにでもいる平均的な日本人である。


ただ、神社に行くと何かを感じることがあった。

何か、厳かな存在・・

しかし、神社の森の閑静な空気、苔むした日本建築のせいだと思った。

ただ、その何かを感じたとき、軽い気持ちのお参りはやめた。

お金とか、出世とかは。

お参りするのは家族の健康、平和といったごく平凡な願い。

それと神への感謝の気持ちだけだった。


自分でもなぜ、そうするのかは分からなかった。


さらに付け加えると、お参りする神社も何処でもというわけではない。

入りたくない神社もあった。

何かがそうさせているという、漠然とした無意識がそうさせていた。


そんな青年であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る