第4話 タイで御神託を受けました

タイへの出張日、成田に向った。


あれから神様から連絡がない。

一体、タイで何をさせるつもりなのだろうか・・・

そんな一抹の不安を抱えての出張であった。


そしてタイのスワンナプーム国際空港に到着した。

初日は移動だけなので、とりあえずホテルに向う。

なんど来ても喧噪な国だ。

同僚がバンコク市内で象を見たと言っていたが本当だろうか・・

そんなことを考えながらホテルに着く。


この日は御神託は無かった。


=====


翌日、火曜日の早朝のことだった。

寝ている時に、突然、神から声がかかった。


『これ、起きよ』

「・・・もう少し寝かせて、あと5分・・」


そう言って、上掛けを頭からかぶる。


『朝じゃ! 起きよと言っておろうが!!』

「わっ!!」


頭に大音響が響き、飛び起きた。


『起きたか?』

「は、はい!・・・」


『ここタイで巫女に会ってもらいたい』

「タイに巫女が居るんですか?」

「そうだ」

「タイ人の巫女と話せませんよ、日本語ならいいけど?」

『何を言っておる、日本人だ』

「そうなんですか?」


『巫女から、其方へ依頼があるようだ』

「俺にですか?」

『いや、男巫にだ』

「そうですか・・・、って! どちらも俺じゃないですか!」

『違うであろう、お前ではなく男巫に用だ』

「・・・違うんですか?」

『違う』


「はあ・・いいですよ、もう・・。

 で、巫女はタイの何処にいるんですか?」

『アユタヤ遺跡じゃ』

「アユタヤ遺跡まで行けと?」

『いや、向こうから会いに来る』

「このホテルにですか?」

『そうじゃ』


「このホテル名や、私の名は知らないのでは?」

『いや知っておる』

「え、どうやって?」

『巫女だからじゃ』

「え、それって、何? 能力?」

『そうじゃ。巫女は、他の巫女、男巫、神の場所は分かる』


「え・・・じゃあ、俺にも分かるの?」

『わかるわけ無かろう』

「?」

『修行もせずに、そのような事ができるわけなかろう』

「じゃあ、修行すればできるという事ですか?」


『お主に男巫の本来の修行はできんじゃろう』

「まあ、確かに滝に打たれたり、水垢離みずごりなんてやです」

『いや、それよりも過酷であろうな・・』


「あ・・能力、いりません」

『・・・修行をし得たいと言わんのか?』

「あれ? できないと言ったのは神様でしょう?」

『まあ、そうじゃが・・』


「ところで巫女は、皆、能力を持っているのですか?

 神社の巫女を見ていると、普通の女性ですよね?」


『巫女は能力を持つかわりに貞操をたもち神に仕える』

「それなら、能力が貰えるのでは?」

『あれは巫女であって巫女ではない』

「?」

『あのらは神社に使えており、神にではない』

「でも、舞の奉納など行っているでしょう?」

『神への信心、畏怖からではない。

 あったとしても、なおざりである。

 それに本来の巫女たる厳しい修行をしておらん。』


「そういう事ですか・・まあ、確かにね・・

 でも信心や畏怖に欠けている俺が男巫でいいんですか?」


『いや、不思議とある。無意識ではあるが』

「え?・・」

『それに何より、お主は神が選んだ男巫じゃ』

「・・・脅されてなっているんですけどね・・」


『そうか、なら男巫をやめるか?』

「だから、それが脅しでしょ? 不幸になりたくない!」

『脅しでは無い。神とはそういうものだ』

「・・はぁ~・・分かりました、もういいです・・。」


『では、巫女の依頼を受けるように、よいな?』

「あ、ちょっと待って下さい!」

『なんじゃ?』

「あの、巫女は何時来るんですか?」

『明後日に、このホテルに参る』

「え? ええええ! 無理むり無理むり無理!

 俺、仕事ですよ、仕事!」

『神の仕事を放棄するのか?』

「え? ええ、そうです」


『仕方ない解任するか・・』

「ちょ、ちょっと待った~!!

 少しは俺の社会的事情も汲んで下さい!」


『神の都合より重要ではない』

「俺にとっては重要です!」

『神の意思より、自分の都合を優先するのか?』

「いや、日にちをずらせてもらえば巫女に会います」


『あい分かった、解任をしよう』

「待った!! 待って下さい! 会います、会いますから!」

『? 解任してもよいのだぞ?』

「・・あのですね、それイコール不幸になるわけでしょ」

『そうじゃが、何かおかしいか?』

「・・・いえ、いいです。明後日に会います・・・」

『あい分かった』


はぁ~・・と、ため息が出た。

あ! 男巫の役割など聞くの忘れた・・


「神様・・」

「あれ? 神様・・、いませんか?」

「もしも~し・・」


神様は好きなときに話せて、こちらから呼ぶことはできないのか!?

ため息のオンパレードである。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る