第645話 復活

「康生は大丈夫だろうか……」

「ここで考えても意味がない。後は上代琉生達を信じるだけだ」

「そうだな……」

 拠点の中で上代琉生達と国王達での会議が始まった時、今回の会議には参加しなかった時雨さんとリナさんが二人体を休めていた。

「二人そも心配なら会議に参加してもよかったんですよ?」

 するとそんな二人の声が聞こえたのか、近くにいた奈々枝が二人の元に来る。

「いや……私が参加するとかえって迷惑をかけるだけだ」

 しかし時雨さんはすぐに首を横に振って否定する。

 そしてリナさんもそれに続くようにゆっくりと首を振る。

「そうだな。それに人数が多すぎてもあれだろう。だから私達はここで待つことにしたんだ。それは奈々枝も同じだろ?」

「まぁ、そうですね」

 そう言うと奈々枝は二人の近くに腰をおろす。

 奈々枝もまた、先の戦いで必死に働いたので今回は上代琉生に休息するように言われてた。

 だから奈々枝達は隊員達を休ませ、こうしてリナさん達の元に来たということだった。

「ただ皆さん、どうであろうと。今回の会議で決まったことには恐らく従うしかありませんよ。たとえどんな結果になろうとも」

 すると奈々枝は突然真剣な表情に代わる。

「あぁ、分かっているさ。なにせ各国の代表者達の決定だ。先の未来のために私達は従わざるを得ないだろう。なにしろあの上代琉生とお嬢様達が了承したことだ。私はただそれに従うよ」


「そうだな。だからこそ酷な役割を任せてしまったと少し心が痛くなるがな……」

 覚悟を決めているリナさんとは違い、時雨さんはエル達を心配するように表情を暗くする。

 なぜならエル達だって、先の戦いで沢山の働きをしてくれた。

 しかしこの会議で、自分だけが休んでるということに時雨さんはわずかな両親の呵責を覚えていた。

「気にするな。こういうのも適材適所だ。その分、他の場所で頑張ればいい」

「そうだな……」

 だがすぐにリナさんに励まされ、時雨さんはゆっくり頷いた。

 そしてリナさんはすぐに次の言葉をつなげようとするが、周りの話し声が聞こえる。


「――なぁ、英雄は本当にあのまま死んでしまうのか?」

「――いや、国王達はそんなことは絶対にさせないはずだ」

「――そうだな。世界を救ってくれた英雄だ。絶対に死なせることはしないはずだ」


「――それにどうやら、総意はすでに決まっているようだがな」

「そうだな」

 リナさんにつられ、時雨さんも周りの声に耳を傾ける。

 異世界人も人間も関係ない。皆、康生の復活を願っているのだ。

「それによぉっ。あいつと決着つけるためにまだ死んでもらっちゃ困るだよっ」

 するとそこにあちこちに怪我を負ったザグが起き上がる。

「あっ!ちょっとまだ寝てなきゃだめだって!」

 しかしすぐさま奈々枝に取り押さえられてしまい、周囲の人々はわずかに笑みを浮かべるのだった。

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