第637話 歓喜
「皆さんっ!お待ちしておりましたっ!」
上代琉生達と別れたエル達はひとまず上代琉生から言われた通り爆心地へと向かった。
そこでは奈々枝と数人の隊員達が待機しており、エル達と合流を待っていたようだった。
「英雄様の捜索は現在私達が指示を出して捜索しています。ですので皆さんもすぐに捜索をお願いしますね」
「えぇ、勿論よ」
奈々枝の指示でエル達はさらにいくらかのグループに別れる。
「まだ康生は見つかってないんだな?」
「えぇ、今のところは。魔力の感じからして敵の消滅はほぼほぼ間違いないことは分かりましたが……」
「そうか……」
暴発が起こってからおよそ10分ほど経った現状、未だに見つかっていないという状況にリナさんはわずかな焦燥感を感じる。
「大丈夫。康生はきっと生きてる。だからとにかく早く見つけてあげないと」
だがエルは康生が生きていることを信じ、助けるためにもすぐに動くよう言った。
「そうです。今は考える時間はありません。とにかく今は一刻も早く見つめます」
「……そうだな」
エルと奈々枝に言われ、リナさんはすぐに意識を切り替える。
そうしてエル達も国王達と共に康生の捜索を開始した。
爆心地からそれぞれ全方位に向かって進んでいきながら探すという手法だが、今のところ見つかったという報告はない。
しかしそれでも誰一人諦めずに皆必死に康生を探していた。
恐らく皆、恩義があるのだろう。
国王達はつい先ほど敵だったが、それでもあれだけ必死にこの世界のために戦ってくれた康生を見たからだろう。
上代琉生達が言うように、皆康生のことを英雄だと思い、その身を助けるために皆必死だった。
「絶対に見落とすな!そして迅速に移動しろ!とにかく時間がない!早く英雄を助けるぞ!」
「我々の誇りにかけて絶対に死なせてはならぬぞ!」
人間と異世界人の国王達はそれぞれの部下に叫びかけながらも、移動しながら各々目を光らせて康生の姿を探していた。
「私達も負けてられないわよ!今まで康生に沢山助けてもらった分、ここで私達が頑張らないといけないわ!」
だがエル達も負けじと必死に捜索を始める。
その場にいる皆が一丸となって必死に康生を探していた。
そしてそんな思いが天に通じたのか、捜索を開始して約数分後、康生が見つかったという報告が全員に伝わったのだった。
皆はすぐに歓喜き、喜びの涙を浮かべる者もいた。
だがすぐに康生の容態を聞かされて喜びに満ちた表情は一気に反転し、絶望の顔に変わった。
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