第636話 早急
「――どうやら話し合いは終わったようじゃな」
エルと上代琉生が黙って見つめ合う中、リリスはまとめるように二人の間に入る。
「お主は確かに正論じゃが、どうやら皆はエルと同じ意見のようじゃ」
すると周りの皆もリリスの意見に頷くように上代琉生をじっと見つめる。
「――はぁ。分かりました。じゃあすぐに捜索に移りましょう」
皆の意見がまとまっていることに気づいた上代琉生はすぐに諦めたようにため息を吐いた。
「うん、そうしましょう。今はとにかく人手がいるわ」
そう言うとエルは皆をまとめて捜索を始めようとする。
「あっ、でも琉生は琉生で動いてくれて構わないわ。勿論人がいるんだったら少しはそっちに割いてもいいわ。琉生の言ってることも確かに正しいもの」
そう言ってエルは上代琉生に振り返る。
エル自身も、上代琉生の言っていることは正しいことだと分かっているつもりだった。
だけどそれ以上に、康生のことを大事に思っているからこそ今は正しいと分かっていても捜索を優先したいと皆考えているのだ。
「……分かりました。俺も出来るだけ早く合流します」
「それじゃあ私達は残ろうか」
「そうじゃな」
するとエル達から離れて、リナさんとリリスが上代琉生の近くに移動する。
「そもそもお主は皆の意見を聞き過ぎるのじゃ。今はそんな事態じゃないじゃろうに」
「そうですね。私もいつも言っているですけどね。まぁ、何かこいつなりにこだわりがあるんでしょう」
上代琉生のやり方に少しだけ小言を言いながらも、二人は今後のことについて話し合うと持ちかける。
「――分かってますよ。じゃあすぐに今後の方針を決めますよ。皆さんもこちらで決めるのに異論はないですね?」
「えぇ、お願いするわ。でも手伝えなくてごめんなさいね」
上代琉生の言葉にエルが真っ先に答え、そして同時にお詫びをする。
「いいえ、気にしないでください。それこそ適材適所ですよ。じゃあ英雄様のことお願いします」
「えぇ、任せて」
そうして上代琉生達とエル達がそれぞれ分かれて行動を始めた。
「さぁ!皆急いで!早く康生を助けるよっ!」
「「「おぅっ!」」」
エルのかけ声に兵士達は声をあげる。
皆、今まで康生にたくさん助けてもらった者達であり、今まで間近で見てきた者達だ。
だからこそその恩を返すため、皆の意志は強いものとなっていた。
「それじゃあこちらは早急に今後の対応を決めますよ」
「あぁ、そうだな」
そしてその反対側では上代琉生とリリス、そしてリナさん達の三人で今後の両陣営への対応についての話し合いを始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます