第635話 正解

「――それで私たちに一体何をやらせるつもりだ?」

 上代琉生に呼び止められメンバーの内、リナさんが代表するように上代琉生に尋ねる。

 国王達指揮の元、康生の捜索部隊が出発した中上代琉生の指示によって集められた者達は、皆自分達も捜索にしたく思っている。

 そんな上代琉生が呼び止めたのだから、皆それほど大事なことがあると思っているのだろう。

「そうですね。皆さんもすぐに捜索にあたってもらいたいのですぐに終わらせますよ」

 そういうと上代琉生はエルとリリスを呼び前にたたせる。

「皆さんを集めたのは他でもないです。俺達の今後のことについて話し合っておかないといけないからです」

「今後のこと?まさかそんなことで私達を呼び止めたのっ?」

 上代琉生が呼び出した理由を聞いてすぐに声をあげた。

 これからの話をすることよりもエルは一刻も早く康生を見つけたいのだろう。

 そしてそれは他の者達も同様の様子だった。

「今だからこそしっかり話し合わないといけなんです。確かに英雄様も大事ですが、その英雄様が作ってくれた今この時、そしてこれからの未来のためにしっかり話し合う必要かあるんです!」

 見ると上代琉生の表情もわずかにだか苦しんでいるよう見えた。

 恐らく自身もすぐに康生を探しにいきたいのだろう。

 それでも、今後の未来のためにも今ここで話し合う必要があると判断したようだった。

「当初の予定通り、人間も異世界人も共闘することで、種族間の壁も少しは取り除かれました。ですが我々は力を示しすぎた。英雄様の力や次元の力。これらは必ず今後の未来、驚異になりえる。それこそ本当に2種族が協力して我々に敵対してくる未来もあります。だから今のうちに手を打っておく必要があるんです」

 上代琉生の言葉に皆誰もが口を閉じる。

 皆、康生について焦っていた様子だったが、次第に上代琉生の言葉を聞いて落ち着きはじめる。

「――そんなものは必要ないわ。私達はただ話し合うだけ。これ以上争いは絶対に生まない。その思いで動くだけよ」

 だがそんな中、エルは上代琉生を真正面から見つめる。

「どれだけ力を示そうとも私達は絶対に力を誇示しないで話し合いで解決する。その姿勢さえ今の皆ならきっと耳を傾けてくれるはずよ。今だって皆康生を探すために必死に動いてる。なのに私達だけ裏で動くなんてのは絶対にだめ」

 まっすぐと、そして上代琉生を叱りつけるようにエルは言い放つ。

 確かに今後のことを考えれば、今の内に話し合い国王達に働きかけるのは正解だろう。

 しかし康生を探してもらっている中で、自分達だけそんな真似は出来ないと言うのだった。

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