第633話 捜索部隊

 魔力の暴発による爆発はおよそ10分程度も続いた。

 それまでの間、辺りの地面は風圧により削れ、中には直径数十メートルもの穴があいた場所さえあった。

 そんな中、上代琉生達はただひたすらに皆で固まり耐えていた。

 爆風が続く中、エルは必死に康生の安否の願いながら、爆風が早く終わることを必死に願う。

 そしてそれは他のメンバーも同じ思いだった。

「――そろそろ準備してください!」

 すると何かを感じ取ったのか上代琉生は周りに声をかける。

 その直後、わずかにだが爆風が弱まる。

「よしっ!すぐに康生を探しにいくぞ!」

 爆風が弱まったことでザグはすぐさま立ち上がり康生の安否を確認しにいこうとする。

「そうねっ!早く康生を探さないとっ!」

 そしてまたエルも同様に立ち上がってザグと共に戦場へ戻ろうとする。

「待ってください!とにかく今は皆の安否確認が先です!エルさんは重傷を負った人の治療をお願いします!」

 だが上代琉生はすぐにエルを呼び止める。

 見ると爆風によって巨大な岩が飛んできたのか、中には頭から血を流して倒れている者や、足を骨折している者まで様々だった。

「で、でもっ……!」

 しかしエルにとって、今は康生が一番大切だ。

 とにかく康生を助けるためにすぐにでも動き出したい。

「でもじゃないです。今は現状確認が優先です。まだ敵が消滅したとも分からないんです!だからとにかく落ち着いて!敵及び英雄様の確認はすぐに部隊を組ませて向かわせます」

 珍しく口調をあらげた上代琉生はエルにきつく言い聞かせる。

「…………分かったわ」

 冷静になれと言われたからか、エルはしばらく黙った後、ゆっくり頷いた。

「じゃあ早く治療してしまうわよ!康生の捜索はすぐにお願いね」

「当然、分かってますよ」

 そういうとエルは早速に治療に入る。

 そして上代琉生もすぐさま兵士達を集めて頭を下げる。

「そういうことですので皆さん、どうか康生の捜索のご協力お願いします!」

 康生の安否に関しては異世界人と人間達には味方ではないので、捜索は手伝ってくれないと考えたのだろう。

 だがそんな上代琉生の考えとは裏腹に国王達はすぐに了承した。

「当然だ。我らを救ってくれた英雄を見捨てるわけはいかない」

「そうだ!このまま勝手に死んでもらっては困る!」

「皆の者!すぐに捜索に移るぞ!絶対に英雄を死なせるな!」

 国王達は口々にそう言うとそれぞれの国の兵士達を集めて大規模な捜索部隊を作った。

「それで上代よ。我らはどうすればいい?」

「――ありがとうございます」

 上代琉生はそんな国王達にお礼を言った後、すぐに指示を出すのだった。

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