第632話 無茶

 辺り一体に豪快な爆発音と共に、眩い光が包み上代琉生達はすぐに身を丸めて自身を守る。

 爆音と同時にとんでもない爆風が上代琉生達を襲い、皆は必死になってそれを防ぐ。

「頼むっ!」

 上代琉生が即座に叫ぶと、事前に話し合っていた通り、わずかに魔力を残していた兵士達が咄嗟に壁を作り爆風を防ぐ。

 だがそれでもなお爆風は壁を貫通して皆を襲う。

 敵がいた位置からすでにかなりの距離を離れていたのにもこれほどのものだ。

 中には吹き飛ばされそうな者さえもいた。

「くそっ!皆で固まれ!絶対に飛ばされるなよっ!」

 上代琉生は必死に地面にしがみつきながら皆に呼びかける。

 とにかく皆で固まり、地面にしがみつき耐えるしかない。

 爆風は長い間続くわけではないので、とにかく今はほんの少し頑張るだけだ。

「康生っ!康生っ!」

 だがそんな中、康生の身を思ってエルは必死に呼びかける。

 あろうことか立ち上がり、爆心地へと向かおうと足を進めようとしていた。

「エルっ!やめろっ!」

 そんなエルを見て上代琉生は咄嗟に呼び止める。

「康生っ……!」

 だがエルは爆風にその身を吹き飛ばされそうになりながらも必死に康生の名前を叫ぶ。

「――あっ」

 だがこの爆風を正面から受けて吹き飛ばされないはずがなく、特に華奢なエルはすぐに足をとられてしまう。

「エルっ!」

「エルお嬢様っ!」

 しかし背後に控えていたリナさんと時雨さんが咄嗟にエルを受け止める。

「無茶しないでください!」

 エルを受け止めたリナさんはすぐさま地面に伏せたあとに叱りつける。

「で、でもっ、康生がっ!」

「それでエルまで怪我をしてどうするんだ!回復

を頼れるのはエルしかいないんだからなっ!」

「うぅっ……!」

 さらに時雨さんまでもエルを叱る。

「とにかく今は康生を信じて耐えろ!」

 時雨さんの言葉にエルはゆっくりと頷く。

「そうじゃ、今はとにかく耐えろ」

 リリスも同じようにエルに視線を向けた後、すぐに上代琉生の近くへと移動する。

「爆風が止んだ後は分かっておるな?」

「はい、勿論ですよ。すぐに英雄様を捜索する算段は考えてます」

「よし、じゃすぐに動けるよう指示を準備をさせておく」

 そう言うとリリスはすぐに国王や兵士達に言葉を飛ばす。

「全く、結局無茶するんですね。でも絶対に死なせませんから」

 そう言いながら上代琉生はすぐに無線を飛ばす。

「――奈々枝っ!聞こえているな。爆風が止んだ後はすぐに英雄様の捜索に移る!お前だけが頼りだからなっ。頼んだぞ!」

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