第631話 爆発音

「英雄様っ!英雄様っ!!」

 無線を突然切られた上代琉生は何度も何度も康生に呼びかけるが、もう無線はつながらなかった。

「どうしたのっ!康生がどうかしたのっ!?」

 移動中だったエルは、上代琉生の大声を聞いてすぐに足を止めた。

「無線が突然切れたんたんですっ!」

「待てっ!説明しろっ!」

 上代琉生は今にも康生の元へと向かおうとするが、リナさんがすぐに腕をつかむ。

「一体何があったっ!?」

 あまりにも取り乱している上代琉生を見て、流石に緊急事態だと思ったのだろう。

 リナさんは咄嗟に上代琉生を止める。

「攻撃は無事に直撃したみたいですっ。だけどうまく制御されて暴発しなかったみたいですっ」

「なんだとっ!?それは本当なのかっ!?」

「くそっ、まじかよっ!」

 いつの間にか近くに来ていた時雨さんとザグは声をあげる。

「――それで、奴はどうしようと言っておるのじゃ」

 状況を確認したリリスはすぐに上代琉生に尋ねる。

 さらに、いつの間にか回りには緊急事態を察した皆が立ち止まって上代琉生の言葉に耳を傾けていた。

「英雄様は……康生は……、一人でなんとかしようとしています。恐らく制御出来ないように攻撃を仕掛けるつもりでしょう……」

「そんなっ!?そんなことしたら康生がっ……!」

 上代琉生の言葉を聞き、エルが真っ先に声をあげる。

 暴発させるために攻撃を加えて制御を乱すということは、つまり暴発直後に康生ももろに食らってしまうということだ。

 至近距離で暴発するまで攻撃するということは、康生自身も逃げる隙は必ずない。

「くそっ!あいつ、何やってんだ!すぐに止めにいくぞっ!」

 現状を知ったザグはすぐさま康生の元に向かおうとする。

「――くっ!こんな時に限って魔力切れかよっ!」

 だが今のザグ――否、その場にいる者達には魔力はなく、離れた場所にいる康生を助けに行ける人は存在しない。

「くそっ!なんとかならないのかっ!」

 康生の身を案じ、時雨さんは苛立ち混じりに上代琉生に助けを求める。

 何か康生を助ける方法がないのかと。

「……現状、ここから戻るには時間が圧倒的に足りません」

「そんなっ……」

 その言葉を聞き、その場の者達は皆表情を暗くする。

 だがエルだけは諦めた様子はなかった。

「私はまだ魔力があるわよっ!だからこれでっ!」

 もしもの時の用に、回復が出来るエルだけは魔力を残してた。

 だからこそそれで何か出来ないかとエルはすぐに上代琉生に提案するが。


「っ!?」


 その瞬間、辺り一帯を包む眩い光と、そして少し遅れて爆発音が響いたのだった。

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