第630話 覚悟
「なっ!?」
装置を放った直後、康生は暴発から逃れるためにすぐさまその場から離れようとする。
だが、何か違和感を感じた康生は音速の速度で逃げようとする直前にわずかに振り返る。
その瞬間、康生は目の前の光景を見て思わず固まってしまった。
「どういうことだよっ!」
康生は急いで逃げようとした体を止めて、すぐさま人型の生物に体を向ける。
「くそっ!これでもだめかっ!」
『どうしました英雄様っ!?』
装置を放った直後、爆発が起きないことで上代琉生が慌てて無線をつなげる。
「攻撃は成功した!だけど奴が必死に制御しようとしているせいで暴発しない!」
『くっ……。まさか魔力の量が足りなかったのか……?』
魔力の塊はすべて人型の生物に直撃した。
しかし当初の予定通り膨大な魔力を制御出来ずに暴発するはずだったが、あろうことか人型の生物はそれらすべての魔力を取り込もうとしている。
制御量をぶつけているはずだが、人型の生物は必死にあらがって暴発を防いでいる。
「だがもう一押しで制御出来なくなるはずだ!だから皆はとにかくここから避難してくれ!俺がなんとかする!」
『で、でもそれだと英雄様がっ……』
上代琉生が慌てるように声をあげるが、康生は途中で無線をきって放り投げてしまう。
恐らく康生がやろうとしていることをすれば、康生が逃げるための時間も魔力もなくなってしまう。
そう思ったからこそ上代琉生が必死に止めようと声をあらげたが、康生はそれを無視したのだ。
「これで止められなきゃ、もうお前を倒す手段はない。だからこそこれで絶対にしとめてやるっ!」
康生自身も今からやろうとしていることをすれば、逃げられなくなることは知っている。
だが康生は覚悟を決めた表情で人型の生物に向かって突撃していく。
「これで本当に最後だっ!いくぞっ!」
康生は叫びながら突撃していく。
魔力を制御しているということだから、つまり攻撃を加えればすぐにでも制御出来なくなり暴発してしまう。
やること自体は至極簡単なこと。
(……ごめん、皆……エルっ)
康生は最後に心の中で皆の顔を思い浮かべながら謝る。
わずかに表情を暗くする康生だったが、すぐに表情をキリッと変えて覚悟を決める。
「いっけぇっ!!」
康生は叫びながら魔力を一気に解放させて、人型の生物につっこんでいった。
そして次の瞬間、辺り一帯を巻き込むような眩い閃光が走る。
辺り一面が一瞬のうちに真っ白い世界に変わる。
そしてその直後、巨大な爆発音が響き、地面がえぐられるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます