第627話 確実
『――簡単に作戦の概要を説明します!』
作戦会議直後、上代琉生は康生に無線で作戦の内容を簡潔に説明していた。
『敵を倒すために元々人間達が用意していた砲台を改造し、それで敵を消滅させます』
人間が用意していた砲台というのは、異世界をまるごとを滅ぼそうとしていたあの機械だろう。
上代琉生はあれを活用して敵を倒すことを考えたようだった。
だが元は膨大な魔力を集め、それを放出することによる魔力兵器だ。
当然全身が魔力の塊である人型の生物には攻撃が通じるはずもない。
しかし上代琉生に策があるのだろう。
『これは異世界人から聞いたのですが、膨大な魔力が同じ場所に密集しすぎると暴発し、消滅してしまうようなのです』
上代琉生の説明を聞きながら康生はリリスから聞いた話を思い出す。
というのも『解放』の力を使う際、あまり強大な魔力を集めすぎると先の説明の通り、暴発してしまうようだ。
しかしそれは一人だけの魔力だけではなるものではない。
もしそうならば体内にある魔力だけで暴発してしまう。
だからリリスからはそこまで気にしないようにいわれていたことだった。
『敵もその部分は制御しているようですが、高密度の魔力を、しかも全方位からあてた際、敵は吸収し切れずに暴発してしまう、という見解です』
(なるほど……)
人型の生物との戦いながら康生はじっくり作戦の内容を頭に入れる。
その方法ならば恐らくは人型の生物を倒すことができるだろう。
装置についての改造はメルンやAIがいるからなんとかなるだろうとすぐに考える。
『なので英雄様には装置ができるまでの時間稼ぎ、それと装置を直接敵に打ち込む役をお願いします』
そして最後に康生の役割を言い渡される。
装置を使って、敵を倒す。
それだけのシンプルな作戦だった。
『もちろん、敵が消滅する際はあたり一帯を巻き込みますので英雄様は確実に敵に攻撃を当てつつ、すぐに逃げてもらいます』
最後に上代琉生はしっかり忠告する。
『それではよろしくお願いしますね』
「こっちこそ頼んだっ」
無線が切れる間際、康生は戦闘の合間にわずかに言葉を返した。
これが作戦の概要だった。
そして現在装置が完成し、無事康生の手元に装置がわたる。
それはトリガーを引くだけで射出できる簡単なものだ。
だがこれを確実に敵にあて、そして皆が巻き込まれないようにも意識しないといけない。
そんなことを考えながらも康生はじっと正面の敵を見据える。
「さぁ、そろそろ終わりにしようかっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます