第625話 装置
「隊長!魔力の補給が完了致しました!」
作戦会議が終わってから時間にして僅か五分程で、上代琉生の元に隊員達が集合する。
隊員達は皆、それぞれ手元に魔力が集まった魔道具を持っている。
「これが今我々の出せる魔力の全てだ」
「我々は元々の魔力量が少ないから少しだけじゃがな」
そして同時に異世界人と人間の国王がそれぞれ魔力が集まった報告をしにやってくる。
作戦会議で話した通り、これで今ここにいる味方全員から体内にあるほとんどの魔力を吸収したことになる。
それは国王達も例外ではなく、特に異世界の国王達は他の兵士達動揺にわずかに精気が抜けたような表情を浮かべていた。
「大丈夫ですよ。その分、人間の方達には例の装置を手伝ってもらってますから」
「ならいいんだが」
「確かにああいう細かい作業は我らには向いてないからな」
そう言いながら国王はメルンを中心として人間の兵士達が作っている装置に視線を移す。
「あれもすぐに完成するんだったよな?」
「はい。おかげさまであれももうすぐで完成します」
「しかしまぁ……あれだけの技術力が人間にあるとは思いもしなかったよ……」
すると異世界人の国王の一人が、装置を見て僅かに言葉を漏らす。
「まぁ、あの技術も元は魔力があってこそのものだよ」
「ふっ、確かにそうか。だがそれでもまさかあれほどの応用力があるとは。人間も中々に侮れないな……」
「そうでもないさ」
装置を見てながら両方の国王達が言葉を交わす。
その様子は、まるで今まで殺し合っていた間柄とは到底思えないほどの雰囲気のものだった。
近くで見ていたエルもそんな様子を見て僅かに目元を潤す。
「まだ感動するのは早いぞ。あの驚異を討ち滅ばさない限り未来はない」
しかしすぐさまリリスがそんなエルを咎める。
決してまだ油断してはならないのだと。
「えぇ、分かっているわよ。たとえこれが終わったとしてもすぐに平和になることなんてないことだって分かってる」
エルは何か思い詰めるような表情に変わるが、しかしすぐに真っ直ぐ前を見つめる。
「でも、足がかりは出来た。決して不可能な未来じゃなくなった。だからきっと今の状況も皆で頑張ればなんとかなると私は思うわ」
「ふっ、そうじゃな」
昔のエルと比べたリリスは、少し成長したエルを見て感慨深い表情を浮かべた。
「二人共、すぐに準備して下さい!装置が完成しました!」
そしてそんな二人の元に上代琉生がやってくる。
どうやら無事に装置が完成したようだった。
つまりようやく作戦が開始される。
これが正真正銘、最後の作戦が始まろうとしていた。
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