第624話 反撃

「く、そぉっ!」

 もう何度目かになるほどの攻防の末に康生は攻撃を防がれてしまう。

 苛立ち混じりに空気を吐き出すも、すぐに相手の攻撃を防ぎ、その隙に攻撃を入れる。

 当然向こうも間髪入れずに攻撃を放ってくるので休む暇さえないほどだった。

 しかもその戦闘のスピードはもはや常人のそれを軽く越えており、今なお周囲に衝撃が広がりそろそろ大地がひび割れ始めていた。

 その中心で康生は人外である化け物と戦闘していた。

 強大な魔力をまとうことで身体能力が大幅に上昇し、今ならばAIのサポートなしで全ての攻撃を見切ることが出来ていた。

「くそっ!やっぱりこれでもダメかっ!」

 だがそれでも康生は人型の生物を倒せずにいた。

 全身を強大な魔力を覆い、戦闘能力を大幅に底上げし、さらには敵から魔力を吸収する力と、康生は今出せる全ての力を持って戦っている。

 しかしAIも予想していた通り、それでもなお敵に届かない。

 敵を倒す決定打になることは叶わなかった。

「おらっ!おらっ!おらっ!」

 だが康生はそれでも諦めずに必死に攻撃を打ち込む。

 倒すことは出来ないとしても、敵にダメージを与えることは出来る。

 だからこそ、康生は仲間を信じ今はとにかく敵にダメージを与えることだけを考える。

 全身に魔力を纏わせるのは相当な力を使い、すぐにばててしまうが、それを使っているのは全て作戦が出来たあがったという仲間の言葉を信じているからだ。

 一人で倒せなくてもと、康生はとにかく必死に戦っていた。

「…………」

 だがその反面、人型の生物はただただ冷静に康生を殺すように迫ってくる。

 そもそも意志があるかも分からないその生物はただただ康生を殺すために攻撃を放ち続ける。

 全ては自身の驚異をこの世から無くすためなのか、その真意は分からない。

 だが学習する知能を持っているからこそ、康生は僅かに敵に意志があるのではないかと感じていた。

「はぁっ!!」

 しかしだからといって康生は目の前のそれとわかり得るとは一切思わなかった。

 これはただの災害であり、生き物ですらない。

 だからこそ康生は敵を消滅させるためにただひたむきに、がむしゃらに攻撃を入れ続ける。

 そしてそんな思いからか、今の攻撃で敵の腕がわずかに削れ、消滅した。

「っ…………」

 敵は僅かに動揺したかのように見えたが、しかし痛みなどないのかすぐに反撃してくる。

「ま、まだまだっ!」

 いくら攻撃を入れても先が見えない戦い、そんな中でもやはり康生は諦めずにただひたすらに拳を奮う。

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