第621話 作戦

「俺は誰よりも強いんだよぉっ!」

 半ば意固地になりながら康生は、自分を鼓舞するように声を張り上げて敵へ突っ込んだ。

 一見、捨て身の突進のように見えるそれだったが、実際のところは大きく違った。

「いっけぇっ!」

 というのも無謀にも突っ込んできた康生へと向かって人型の生物は康生にカウンターを入れようとしてくる。

 知能を有し、戦闘についての学習をしているからこそその動きは当然のものだった。

 だが康生はそのカウンター攻撃を完璧に回避する。

 そう。あらかじめカウンターを入れられることを予測し、その上で攻撃を入れようとしているのだ。

 だが敵の攻撃スピードはかなりのもの。

 そもそも普通の攻撃を避けることすら難しいものだ。

 しかしこの戦いの中で成長しているのは敵だけではない。

 康生自身も敵と攻防を繰り返す中で、成長しているのだ。

 敵のスピードに慣れた康生だからこそ、この作戦は成功するのだった。

 だが敵も当然カウンターを回避されればすぐに次の攻撃を仕掛けてくる。

 しかし康生はその僅かな隙を見計らって敵に接近し、魔力を吸収する。

 戦いの中で気づいたことだが、康生は近くにいる対象から間接的に魔力を吸収できるようになっていた。

 これも魔力暴走の力というわけだ。

 だから康生はこの戦いで、とにかく敵に接近し魔力を吸収し続けなければならない。

 しかし魔力吸収には僅かな集中力を割かなければいけない手前、長い時間はできない。

「ちっ」

 現に今も魔力を吸収していた康生だったが、敵の攻撃によりすぐにそれを中断する。

 しかし康生はそれでも諦めずにさらに限界のギリギリまで近づこうとする。

 先ほどカウンターを回避して近付いた作戦は恐らく二度と通用しないと分かっているからだ。

 すぐに学習してしまうので、敵に同じ手は通用しない。

 だからこそ、攻撃が通用する今が一番のチャンスなのだ。

「俺は負けないっ!」

 そして康生は決死の覚悟の中、敵に接近するのだった。




「――と、いうことでどうでしょうか?」

「ふむ……」

 そして康生が人型の生物と死闘を繰り広げている最中、上代琉生を中心に異世界人の国王達と人間の国王が集まっていた。

 皆、人型の生物を倒すために策を講じている最中だった。

 そして今、康生が時間を稼いでいる間に上代琉生達は敵を倒す算段を考案していた。

「それでは皆さんご協力お願いしまう。この世界の為に絶対にあの生物を消滅させますよ」

 最後に上代琉生のその言葉に国王達は皆一斉に頷き、意志を一つにするのだった。

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