第622話 空中
『英雄様!作戦が決まりました!』
康生が人型の生物と死闘を繰り広げている最中、康生の無線から声が入ってくる。
『少しだけでいいので耳だけ貸して下さい!』
上代琉生はそう言うと簡単に康生へ作戦を説明する。
一瞬の隙すら許されないそんな最中、貴重な康生の集中力を奪ってでも上代琉生は簡単に作戦を説明する。
康生も一人だけでは勝てないと分かっているからこそ、文句を言わずに最大限攻撃に気をつけながら無線に耳を傾ける。
『――ということでよろしくお願いします』
上代琉生は作戦を説明し終わるとすぐに無線をきった。
恐らくすぐにでも作戦に取りかかるべく準備を始めるのだろう。
そして康生はというと、作戦を聞いた後に再びに意識を人型の生物に向ける。
康生の役割は目の前の敵を倒すこと。
それだけを念頭においてただひたすら敵にダメージを与えることだけを考える。
それが康生のやるべきことであり、今の康生しかできないことだ。
『――そろそろ全ての力を出し切ったらどうですか?』
すると今度はAIから無線が飛んできた。
「あぁ、そのつもりだよっ」
だが康生はあらかじめそう決めていたかのように、AIの言葉に笑みを浮かべる。
敵を倒す算段を皆に考えてもらったからこそ、後は康生が全力を出して頑張るだけ。
「それじゃあ行くぞっ!」
康生はそのかけ声と共に全身に意識を集中させるのだった。
「なんじゃあいつのあの光は……」
作戦が始まった瞬間、空中にいる康生を見たリリスは動きを止めた。
「すごい……光ってる……」
そしてエルもまた同様に康生を見上げて止まる。
そんな二人の言葉を聞いて回りにいた国王達、そして周りを囲っている兵士達も同様に康生をみる。
「全く……あいつは人間のくせにこうも我々を上回ってくるとはな……」
国王の一人がもはや呆れたかのように言葉をもらす。
「あれは一体なんじゃAI?」
『あれは全身に濃度の高い魔力の膜を張ったものです。あの光は恐らく高密度の魔力が集まったからこそのものでしょう』
「魔力の膜か……」
AIの言葉にリリスはただただ言葉がでなかった。
「ですがあれでは倒せないんですよね?」
『はい。現状、ご主人様一人であれを倒すことは不可能です』
だが上代琉生の問いかけにAIははっきりと答えた。
「ならば、後は皆で力を貸すだけです。さぁ!早く準備にかかりますよ!」
上代琉生の声に皆はすぐに準備を再開した。
しかしただ一人、エルだけが康生の身を案じ、ずっと空中を見上げ続けているのだった。
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