第616話 不気味
『あれはもう人の手ではどうしようも出来ない存在になったようです。なのでご主人様はすぐにあれを止めて下さい。あれを止めれるのはご主人様しかいません』
AIが導き出した答えに一同は呆然とする。
だがそんな中、ただ一人AIに名前を呼ばれた康生だけは覚悟を決めた表情に変わると、その場から一瞬でいなくなる。
「はぁっ!!」
次の瞬間、かなり遠くにいたはずの康生が目の前の物体――否、人型の生物に向かって拳を突き出していた。
まさに突然の攻撃。
不意打ちをとるような攻撃に流石に人型の生物は拳をもろに食らってしまう。
「まだまだっ!」
しかも康生は一撃入れるだけではなく、次々と拳を振り上げて攻撃を続けざまに入れていく。
速度にして、一秒に数百発ほどのものだった。
魔力暴走や『解放』の力、そしてメルンと共に作った魔道具のおかげもあり、今の康生の戦闘能力は今まで以上のものとなっていた。
「これで終われぇっ!」
精一杯拳をぶつけながら康生は必死に叫ぶ。
ザグ達への不可解な攻撃及び、AIが判断した人型の生物の驚異。
それらを考えて康生はすぐにでもこの驚異を排除しないといけないと判断したのだ。
だからこその猛ラッシュ。
この攻撃で確実に倒す意志が康生からは感じられる。
『――逃げて下さいご主人様!』
「えっ?」
だが次の瞬間、康生の元に慌てるようなAIの声が聞こえてくる。
『早くっ!』
僅かに戸惑いを見せる康生だったが、AIに散策急かされた康生はすぐに人型の生物から離れる。
「ぐっ!」
その直後、激しい衝撃が康生を襲う。
だが康生は衝撃を感じた直後、すぐに体を動かし緩和させる。
だが同時に複数の衝撃を感じた康生はすぐに速度をあげその場から退避する。
「なっ!?」
だが康生が移動した先、その場にはいつ間にか移動した人型の生物が康生を待ち受けていた。
「ちっ!どういうことだよっ!」
康生は若干苦しい表情を浮かべて方向転換をした直後にさらに速度をあげて退避した。
「――はぁっ……はぁっ……。なんなんだよあれは……」
ひとまず距離をとることに成功した康生は息を荒くする。
「……しかも全くダメージが入っちゃいねぇじゃねぇか」
康生は息を整えながら目の前の人型の生物を睨む。
しかしその体には、先ほどまでの康生の攻撃によるダメージが全くもって感じ取られなかった。
「魔力吸収は確かに機能していたはずだ……。なのにどうして……」
あまりにも不気味な目の前の敵に対して康生は徐々に敵の危険度を自覚していく。
『英雄様。かなりヤバい状況になってきました。あの生物は英雄様の攻撃を全て回避していたんです』
そしてすぐに入った無線を聞いて、康生はさらに表情を暗くするのだった。
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