第611話 サポート

「くれぐれも気を抜くなよザグっ」

「分かってらぁっ!」

 康生と交代したリナさんとザグはすぐさま、物体の注意を康生からそらすために攻撃を仕掛けようとする。

『気をつけて下さい。気を抜くとすぐに攻撃が当たりますよ』

「分かってるよっ!」

 そして同時にAIとも連携して物体との戦いに挑む。

 先ほどまで康生は魔力暴走の力を使って、魔力の流れを感じることで攻撃を回避し続けていた。

 しかし普通の異世界人であればそんなことは到底不可能だ。

 だからこそAI支援がないとすぐにでもやられてしまいかねない。

「けっ!一人じゃないのは癪だが、やってるよっ!」

 しかしザグはそれでも真っ直ぐ物体に向かって突撃していく。

 一見無防備に見えるその攻撃だが、AIのサポートもあってか物体の猛攻撃を完璧に回避していた。

「リナさん頼むっ!」

「全くっ!」

 しかしそれでもザグ一人では限界がある。

 だからこそ後方で控えているリナさんに援護を頼み、ザグは一直線に物体へと接近しダメージを与える。

「よしっ!このままっ!」

『すぐに逃げて下さいっ!』

 一度接近したことでザグは続けざまに攻撃を入れようとしたが、AIの緊迫した声に驚きすぐに後方へと下がった。

「――なんだありゃっ」

 咄嗟に後方へと下がったザグだったが、目の前の光景を見てわずかに目を見開く。

 というのも先ほどまでザグがいた地点には、突如膨らんだ物体が存在していた。

『物体に接近しすぎると、敵は自身に取り込もうとしてきます。あれは魔道具一つの力ではあらがうことも出来ません』

「なるほどなっ。つまり一度攻撃したらまた下がらないといけないわけかっ……」

 ヒットアンドアワェイな戦法にザグは小さく舌打ちする。

 先ほどの突撃だってかなりのギリギリを攻めていた。

 それも全て近づいて攻撃すれば倒せると踏んでいたからだ。

 なのに一回一回逃げなければいけないということは、相当な長期戦になる恐れがある。

「なるほどな、これは確かに災害と呼ばれるわけだ」

 リナさんも敵の攻撃を観察しながら僅かに表情を曇らせる。

「だがあいつは一人でこれと戦っていたんだっ。だったら俺だってやれるっ!いくぞリナさんっ」

「あぁ、分かってるっ!」

 しかしそれでも諦めるわけにはいかない。

 ザグ自身も康生に負けないためにもこんなところで逃げるわけにもいかない。

『私も全力でサポートしますので頑張って下さいね』

「あぁ、頼むぞっ」

 そうしてザグとリナさん、そしてAIの三人で物体に立ち向かうのだった。

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