第612話 闘志
『――右から来ます』
「おぅっ!」
『続いて左、その次に真下から来ます』
「ちっ!相変わらず鬱陶しい攻撃だなっ!」
AIから指示を受けながらザグは必死に攻撃を回避しながら物体に接近していく。
『――左から来ます』
「分かった」
さらにその反対側ではリナさんもザグと同様に物体に接近すべく近づいていた。
左右から同時に仕掛けることで少しでも自身に向かってくる攻撃の数を減らすという作戦だった。
だが実際のところ、激しい猛攻撃が繰り広げられているのを見てリナさんは早くも表情を険しくさせる。
「くそっ!このままだと一向に近づけないっ!」
『落ち着いて下さい。集中を乱せば一瞬で死にますよ』
「分かっているっ。だがこれはかなり……」
とそこまで言った瞬間、リナさんの目の前から突如として多数の魔法が放たれる。
「ぐっ……」
咄嗟に横に移動して攻撃を避けるが、それを狙うようにさらに魔法が放たれる。
しかも今回はさらに回避しようとしていた地点にあらかじめ魔法が展開されており八方塞がりの状況に陥ってしまう。
「ちっ!AIっ!」
だからこそこの状況の最適解を僅かな時間でAIに尋ねる。
『はい。そのまま真っ直ぐ進んで大丈夫です』
「な……」
『信じて下さい」
AIに真っ直ぐ進めと言われてリナさんは反論しようとするが、しかし有無を言わせぬような圧で言われてしまい、リナさんはすぐに考えを止めてAIを信じるように真っ直ぐ突撃していく。
だがリナさんが僅かに戸惑ったように、目の前にはすでに新たな魔法が展開されており、当たれば死んでしまいかねないほどの威力の魔法だった。
「――任せて下さいっ!」
リナさんが決死の覚悟で突貫していった直後、メルンの叫び声と共にリナさんの目の前に展開されていたい魔法が消えてなくなってしまう。
「助かったメルンっ!」
「いえっ!もしもの時は私もサポートしますっ!」
僅かに振り返ると、少し距離をとった地点でメルンが銃の形をした魔道具を持っていた。
あれも恐らく新たに開発した魔道具なのだろう。
どうやら康生に特殊な装備を渡し終えたメルンは、その準備が終わるまで協力してくれるようだった。
「ですがあまり期待だけはしないで下さいねっ!」
「そんなことは分かってらぁっ!だがもしもの時は頼むぞ!」
ザグはそう叫んで一気に速度をあげた。
「もぉっ!期待しないでって言ったじゃないですかっ!」
そんなザグを見て、メルンはすぐに魔道具を放ちザグをサポートする。
「ふっ。だが、これでさらに敵に近づいた。後は康生が来るまで…………いや、私達で倒してしまうのもあながち夢ではないな」
ザグの突撃していく姿を見ながら、リナさんは密かに闘志を燃やすのだった。
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