第610話 説明

「康生っ!貴様の装備を持ってきたぞっ!」

「リナさんっ!それにザグもメルンもっ!ここは危ないからすぐに離れた方がっ……」

 康生の元へとやってきた三人に向かって康生はすぐに近づかないように忠告する。

 だがそんな康生の言葉を聞いたザグはあろうことす、スピードを速めて康生の隣へ移動する。

「あまり俺をなめんじゃえねぇぞっ」

 舌打ち混じりに言葉を吐きながらザグは迫りくる攻撃を防ぐ。

「俺だっていつまでお前の変わりじゃないんだよっ。一度はお前を倒してるんだからなっ!くれぐれも忘れるなよっ!」

 恐らく康生に弱い者扱いされたことが気に障ったのだろう。

 誰よりも力を求めてきたザグは、当然そんな扱いに耐えられるわけがなかった。

 メルンから魔道具ももらい、そして一度魔力暴走した康生と長時間戦い続けた経験が今のザグにはある。

 だからこそザグは康生の隣に立って敵と対峙した。

「――そうだったな。悪い」

 康生もそんなザグの心情を読みとり軽く謝罪をする。

「だけどあの時は俺の意識はなかったし、何よりお前一人に負けたわけじゃないからな」

「へっ、そんなこと知ってらぁっ」

 しかし康生も、ザグに負けたことを認めようとせずに訂正した。

 その間、二人はお互いに言葉を交わしながらもしっかりと攻撃を避け続けている。

 まさに息のあった連携だった。

「康生っ!しばらく私とザグに任せてお前は装備をつけろ!こいつは恐らくお前じゃないと倒せない!」

「分かりましたっ!じゃあザグ、俺の準備が終わるまでよろしくなっ」

「あぁっ!なんならお前の準備が終わるまでに俺が倒してやらぁっ」

 康生が一時的に前線から下がり、変わりにリナさんが入ってくる。

 物体は先ほどまでの戦闘で、康生を驚異と見なしたのかすぐに追いかけようと魔法を放つ。

「おっとっ!お前の相手は俺だよっ」

 しかしそれを全てザグが防ぎきる。

「お前一人じゃないぞザグっ。くれぐれも油断はするなよっ」

「分かってるよっ。それじゃあ行くぞリナっ!」

「あぁっ!」

 そうして康生と代わり、ザグとリナさんが物体に向かって突撃していった。

 腕や武器に仕込まれた魔道具の効果も手伝い、二人だけでも物体と同等程度に渡り合えていた。

 それを見ながら康生はすぐにメルンの元へと近づいていく。

「メルンっ、すぐに頼む!」

「分かってますよっ!だから慌てないで下さいっ」

 先ほどまで戦っていたからか康生は半ば興奮気味にメルンから魔道具を受け取ろうとする。

 だがメルンはちゃんと魔道具について説明するために康生をちゃんと落ち着かせるのだった。

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