第607話 準備

「くそっ!まだ、まだっ!」

 物体の攻撃を一身に受けながらも、攻撃の手を休めることなく続ける。

 辺りに攻撃の反動をまき散らせつつも、康生はそれでも攻撃の意志を無くさずにひたすら攻撃を回避し、攻撃を繰り出し続ける。

 最初から『解放』の力を全開にして使っているが、それでも体にその反動はない様子だった。

 というのも康生自身も魔力を吸収することによって力を高め、半永久的に『解放』の力を使えていた。

 さらに戦闘開始前にリリスから魔力をもらったこともあり、永遠に戦い続けられるほどの力を得ていた。

 その豊富な魔力のおかげで『解放』の力を使うことによる風圧の負荷も限りなく0に近づけることにも成功し、もはや魔力が供給される限り康生は無敵と言っていいほどの力を手に入れていた。

「おらおらおらっ!いけぇっ!」

 そこまでの力を手に入れた康生は、今まで培った力の全てを使い物体との戦っている。


『――ご主人様のおかげで左右に散った物体の数もだんだんと減っていきましたね』

「そうじゃな」

 地上ではそんな康生の争いを見ながらリリス達は戦場の指揮をとっていた。

 だが左右に散った魔力の塊は、康生によって徐々に弱りつつある本体に戻っているのを見てリリス達は僅かに安堵していた。

「まぁ、あれほどの戦闘をしているんですから仕方ないですよ。その分膨大な魔力を消費しているはずですから」

「あぁ、そうじゃな。今奴らの周りにはとんでもない魔力が放出され続けているからの」

 康生と魔力の物体から絶え間なく出続ける魔力の濃さにリリスは嘆息する。

 だがそのおかげで現状戦況はどんどん良い方向へと向かっていっていた。

「でもあんなに無茶をして大丈夫かしら……?」

 しかしそれでもエルはやはり康生の身を案じる。

「恐らく今は魔力かある分、普通に戦うよりかはよっぽど楽になっているはずじゃ。しかしだからといって油断は出来ぬからな」

「そうですね。そこは俺はしっかり観察しておきますよ」

「うん、お願いね」

「はい、任せて下さい」

 でも今は康生の力を頼るしかないということで、今は康生を信じるしかない。

 さらに作戦の開始時間まで残り僅かとなったので、戦場には僅かな緊張が走っていた。


「――よしっ!準備が出来たようじゃっ!皆の者すぐに作戦にとりかかるぞっ!」


 そんな中、連絡を受け取ったリリスはすぐさま叫んだ。

「了解したっ。AI、すぐに兵士達に連絡をお願いします!」

『かしこまりました』

 ということで無事に作戦の準備が整い、各々は戦いを終わらせるべく動き始めるのだった。

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