第606話 人外
「相変わらず奴はなんなのだ……」
康生との戦闘から少し離れた場所で戦っている兵士達は戦闘中であるにも関わらず、僅かにその手を止めていた。
というのも中央で戦う康生の戦闘が激しすぎて、兵士達の元にも被害が及びそうなほど熾烈だからだ。
「皆の者!手を止めるんじゃないっ!奴らだけに任せておけぬぞっ!」
しかし国王はそんな兵士達を見つけて怒鳴りつける。
今の敵は康生が戦っている物体だけではない。
目の前にも複数に分裂した物体が今もこちらを狙っているのだ。
「す、すいませんっ……!」
康生の戦いを見惚れていた兵士達は慌てて意識を切り替える。
「全くっ」
慌てて戦闘に集中する兵士達を見て国王は大きくため息をこぼす。
だが兵士達がそれだけ気を抜いてしまうのは半分、仕方ないところでもあった。
現在兵士達の目の前にいる物体は小さくなった分、魔法の攻撃の威力も下がり攻撃は過激さが失われた。
しかも康生が壮絶な戦いを繰り広げているおかげで、中央にいる物体の魔力の消耗が激しくなってしまった。
その為、左右に分かれている小さな魔力の物体を、中央の物体が吸収し始めたおかげで兵士達の労力は少しずつ減っていった。
「くれぐれも油断はするなよっ!一つでも敵を見逃せば国が壊滅すると思えっ!」
「はっ!」
だがそれでも油断は決して出来ない。
国王のそんな声に異世界人の兵士達だけではなく、人間達も同じように士気が上がりまさに二つの種族の思いはぴったり重なりあっていた。
「……頼むぞ、リリスよ」
そしてそんな戦場を見ながら国王の一人が、リリス達に願いを託すように呟くのだった。
「はぁっ!」
兵士達の場所から少し離れたところでは、想像通り康生が熾烈な戦いを繰り広げていた。
康生がグローブで殴りつけるの同時に、康生の背後全面に雷の矢が生成される。
グローブで殴り終わると同時にその矢は康生を貫こうと放たれる。
「はっ!」
しかし康生はその攻撃を肌で感じ、瞬時に体を上空へあげて攻撃を交わす。
雷の矢は物体はそのまま物体へと吸収されてしまう。
「ぐっ……」
しかし同時に風の刃が吹き荒れ、康生の体を切り刻もうと襲ってくる。
雷の矢を避けるのとほぼ同時に展開された攻撃は、しかし康生はぎりぎりのところで回避することに成功する。
だが回避をしてもまた次の攻撃が何度も襲いかかってくる。
「まだまだっ!」
しかしそれでも康生は諦めずに攻撃を回避し続け、さらに攻撃を入れることすらも忘れていない。
まさに人外の者同時の戦いだった。
それを見た者は恐らく誰しもそう思っただろう。
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