第605話 交戦
「――どうですか?向こうに連絡はいきましたか?」
「あぁ、用件はすでに伝えたのじゃ。まぁ、メルンの奴はかなり驚愕していたようじゃがな」
それぞれに新たな作戦概要を連絡し終えたメルンは一仕事を終えたようにため息をこぼす。
というのもAIが提案した作戦というのは、それだけ想像の斜め上を行くもので、上代琉生も驚いて僅かに声がでなかったほどだ。
『では作戦までの時間を教えて下さい』
だがそんな心労など気にもとめないようにAIはメルン達に後どのぐらいで作戦を決行できるのかを尋ねる。
「おおよそ30分じゃ。どんなに急いでもそれぐらいの時間はかかる」
『分かりました。ではそれまでこの戦場をなんとか持たせましょう』
「そうですね。じゃあそれまでの間はなんとかこの場を持たせましょうか」
そう言うと上代琉生はすぐに戦場を見渡す。
『本当に一人で大丈夫ですか?』
だがそんな上代琉生を見てAIが心配するように聞いてくる。
「大丈夫です。この分野は俺の仕事なんで。だからそっちの仕事は任せますよ」
『分かりました。それじゃあ作戦が成功することを祈っております』
それで言うとAIは通信をきり、一人作業を開始した。
「よし。それじゃあやりましょうか」
「そうじゃなっ」
『……ということじゃ。だから後30分ほど耐えてくれっ』
「分かったっ!でも30分と言わずに何分でも俺はいけるからなっ」
『そうやって無理ばっかりしようとするのはダメなんだからねっ!』
威勢良く答えた康生だったが、すぐにエルから無線が入って叱られてしまう。
『そういうことなんで、くれぐれも無理はしないで下さいね英雄様』
「わ、分かってるよっ」
上代琉生からも釘を刺されて康生は慌てたように返事を返す。
「でも……。これが終われば本当に終わりなんだよな?」
『えぇ。ひとまず戦いはこれで確実に終わります。そしていい未来に向かうと俺は考えますよ』
「分かった。じゃあそっちは本当に任せるぞ?」
『はい。こっちは任せて下さい』
最後に上代琉生といくらか言葉を交わした後、康生は無線をきった。
「――ということだ。だから残り30分。しっかり俺の相手をしてもらうからなっ!」
そう言うと同時に康生は瞬時に物体まで距離を縮めると攻撃を繰り出した。
物体はすぐさま魔法を何重にも重ねて展開し、康生を倒そうとしてくるが康生は最小限の動きでそれを回避。
そのまま物体へと接近してグローブを思い切り振り上げた衝撃で、物体の体は歪んだように変形した。
「よしっ!まだまだいくぞっ!」
そうして康生は最後の30分、全力で物体と交戦するのだった。
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