第589話 解決

「な、なんだと……っ?」

 康生の発言を聞いて異世界人達が驚愕の表情を浮かべる。

 魔力暴走を経て魔力を操る力を得たと言っていたが、そんなこと到底信じられるはずがなかった。

 だが実際、魔力暴走をすると外の魔力を自動的に吸収し、自身の魔法に変換する力が備わる。

 つまりは康生の言うように外の魔力を吸収し、操ることは出来る。

 それがたとえ魔法に変換されていたとしても。

「つまり俺達人間はあんた達異世界人の細胞を取り込んで魔力を使えるようになった。つまりもう俺達もあんた達となんら変わらない存在ってことだ」

 驚愕のまま何もいえなくなった異世界人達を前に康生はじっと見据える。

「異世界人の中にも人の形に近い者や、獣に近い者などたくさんいるはずだ。だから人間と争う理由なんてないんだよ」

「そ、それはっ……」

 康生の言うように、異世界人達の中には様々な種族がいる。

 この世界に来る前までは多少のいざこざがあったようだが、それでも今の人間達のようなものではなかった。

 だからこそ人間と争う理由なんてないのだと康生は異世界人に諭す。

「あと、人間達も同じだ。お前達はもう散々化け物と罵ってきた奴らと同じなんだよ。だから異世界人達を敵対視する意味もなくなったはずだ」

「くっ……」

 さらに康生は人間達にも同様に語りかけた。

 魔法を使うようになったお前達も、今まで散々罵ってきた化け物となんら変わらないぞ、と康生は言葉をぶつける。


「そうっ。だから争い合う前にちゃんと話し合いましょうっ!きっとお互い誤解だってしてるし、元々世界が違う同士文化の違いもある!でもお互いが歩み寄ればきっと戦うだけじゃない世界もあるはずよっ!」


 と静かになった戦場に向かってエルが突然叫びだした。

「それに今の戦いでお互い協力しあってたのを私見てた!皆も分かったでしょ?お互い理解できないものとして扱うんじゃなくて話し合ったり、協力だって出来るのよっ!」

 エルの言葉を聞いて、それぞれの陣営は静かに黙り込む。

 皆、先ほどの戦いを思い出しているのだろう。

 実際、途中からは完璧とはほど遠いが、それでも康生を追いつめるほどの連携はとることが出来た。

 その経験を思いだし、皆何もいえなくなったのだろう。

「ねぇ、だからお願い。お互い争い合って解決するんじゃなくて、ちゃんと話し合って解決しませんか?」

 すがるようにエルは問いかける。

「…………」

 しかし誰もが口を開かず、じっと立ち止まっているだけだった。

 だがそんな中、一人の国王がエル達の元にやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る