第588話 両方

「俺達はあんた達異世界人の細胞を体内に取り込むことで、魔力を生み出し魔法を使えることが出来るようになったんだよ」

 康生の言葉に人間、異世界人問わずに驚愕の表情を浮かべた。

 だが異世界人ならまだしも、人間ですら魔法を使える仕組みが分かっていなかったことに康生はわずかに驚く。

「まさかお前達も知らなかったのか?」

「あ、あぁ……手術を受けることは知っていたが、異世界人の細胞を取り込んでるなんて初めて聞いたぞ……」

 康生の問いかけに、人間達はまだ信じられないといった様子で反応する。

「何も知らされずに手術を受けたんだな……」

 相変わらずの人間陣営の非人道的な行為に康生は嫌気がさした。

「ま、待てよっ!異世界人なんかの細胞を取り入れたら俺達死んじまうんじゃないのかよっ!?今だって異世界人達の生き血で水や大地が汚染されてしまっているんだぞっ!?」

 しかし人間達は一斉に反論する。

 確かに人間達の言うように、異世界人達の死骸が原因で水や土が汚染され、深刻な食料問題に陥っている。

 それは人間達が異世界人が混じったものを口にれると死んでしまうからだ。

 なのにどうして異世界人の細胞を取り入れて生きていられるのかと、人間達は疑問を抱かずにはいられなかった。

「簡単な話だよ。異世界人の細胞を入れても耐えられるような手術をするんだよ。お前達が若い娘を集めていた理由の一つはその実験を成功させるためだったんだよ」

 若い娘達を利用して、国王達は異世界人の細胞を入れても耐えられるかどうかの実験をしていたのだ。

 ここで男を使わなかったのは、後々戦力となると考えていたからだろう。

 この辺りの情報は上代琉生達――特に奈々枝の情報によって裏付けられている。

「待てっ!だがまだお前の力には納得できないぞっ!我々の細胞を取り入れたとしても、どうしてそこまで無尽蔵に魔力を操れるというのだっ!?」

「それも簡単な話だよ」

 しかし仕組みが解決されても、康生の力を納得することは出来ない。

 だが康生はなんら変わらない表情で説明する。

「俺は十年間、ひたすら異世界人の細胞を接種し続けていた。汚染した水を浄化して、細胞が残ったままでも体内に取り込み、そして両親から渡されて薬で知らず知らずに肉体強化がされていたんだよ」

 と康生は自らの両親が行っていたことを告げる。

「そしてさっきの戦闘で魔力暴走した際に、俺の体内はそれに順応するようになった。その結果、俺は体内、体外両方の魔力を操ることが出来るようになったんだ」

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