第587話 体内

「なんなんだその力はっ!?」

 周囲を魔力の壁を展開させて完全防御をした康生に向かって国王は叫ぶ。

「この魔力は全てあなた達の魔法から吸収させてもらったものですよ」

「な、なんだとっ!?」

 しかし康生は焦る国王とは反対に、ただ冷静に淡々と答える。

 国王が一瞬のうちに吹き飛ばされたことで兵士達もどう動けば分からずに、ただただ康生に畏怖の念を抱いてた。

「い、一体なんだというのだ貴様はっ!?貴様は人間のはずだろう!?なのにどうして魔法をっ、しかもそんな訳の分からない力を使えるのだっ!」

 国王達は未知の力を目の当たりにして、ふるえ混じりに問いかける。

 確かに国王の言うように康生はただの人間だ。

 両親の発明によって、人間でも魔法を使えることが分かったが、それでも異世界人ほどに上手く使えないことは先ほどの戦闘で分かったことだった。

 それなのに康生は異世界人達と同等に――いや、それ以上の力をこうして使ってみせている。

 その事実にただただ国王達、否兵士達は康生という存在に疑念を抱いているのだった。

「確かにそやつは人間じゃぞ」

 すると、そんな国王達の震えた声に地上からリリスが答えた。

「そやつの体には我々の体に備わっている魔力を生み出す器官がなかったから、そやつは確かに人間じゃ」

「だ、だったらどうして魔法が使えるっ!?こんな訳の分からない力を持っているっ!?」

 人間が魔法を使えること自体、異世界人達にとっては理解出来ないのに、ここにきて異世界人ですら知らない魔法を使う人間を前にただただ困惑している。

 しかもリリスの証言を信じるならば、康生はただの人間だという。

「確かに俺はただの人間だよ。それに人が魔法を使っているのは、体内の細胞が微量な魔力を生み出しているからだよ」

「な、なんだと!?」

 そしてリリスの説明を受け継ぐように康生が口を開く。

「俺達人間が魔力を生み出しているサイクルは、体内にある特殊な細胞が魔力を生み出しているんだよ。だけどその力は元々人間にはなかった。あんた達異世界人達が来るまでは」

「ど、どういうことだっ?どうしてそこで我々が出てくる?我々がこの世界に来たから貴様等の生態系が変化したというのかっ?」

「あぁ、その通りだよ」

 国王の疑問に康生は真っ直ぐ答える。


「俺達はあんた達異世界人の細胞を体内に取り込むことで、魔力を生み出し魔法を使えることが出来るようになったんだよ」


 そして次の瞬間、康生の放った一言に異世界人だけではなく、人間達も同様に驚愕の表情を浮かべたのだった。

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