第585話 空中
「いっけぇっ!」
複数の叫び声と共に康生に魔法が放たれる。
康生は退路を塞がれて回避することは出来ない。
すぐに魔力を吸収しようとするが周囲の兵士達が継続的に小さな魔法を全方位から放ってきているせいですぐに対処することが出来ない。
しかもその魔法によってさらに退路を塞がれ、さらに対処し続けないと攻撃を食らってしまう。
まさに逃げ場のない空間。
康生一人相手にここまでの戦力を集中した末の総攻撃だった。
今度こそ絶体絶命の危機に瀕した状況下で康生は冷や汗をかきながらも冷静に周囲を確認する。
(全方位からの魔法――まるで弾幕だ。そして一番厄介なの国王達の魔法。一つ食らっただけでも魔力吸収が間に合わずに死んでしまう……)
思考を巡らせている間にも国王達の魔法は刻一刻と康生に向かって迫ってきていた。
「仕方ないっ!」
だが康生はまだ諦めてはいなかった。
こうなってしまった以上、本気でやらなければ死んでしまいかねない。
「何をしても無駄だっ!」
まだ抵抗する意欲を見せる康生を見て一人の国王が叫ぶが、康生は聞く耳を持たずに精神を集中させる。
(集中しろ……集中……。魔力の流れを意識して……力を意識しろ……)
半自動的に魔法に対処しつつも、康生は精神を統一させる。
しかしゆっくりしている時間はない。
「これで終わりだっ!」
そうしている間に国王達の魔法は康生の目と鼻の先に迫っている。
だが康生はその瞬間に意識を覚醒させる。
そしてすぐに体を動かす。
魔法が当たる直前になってくると全方位を覆っていた魔法の弾幕はなくなる。
しかしその分、周囲に最強クラスの魔法が覆っていた。
だがそれは康生にとって唯一、この状況を打破出来る隙だった。
「はっ!」
意識を覚醒させた直後に康生は声を張り上げる。
その瞬間、康生に迫っていた炎の竜は康生の体に巻き付く。
同時に鋼鉄の硬度を誇る水玉や、強大な雷、風の刃が次々と康生の体へと吸収される。
それは人間じゃなく異世界人すらもまともに食らえば何度でも死ねるほどの威力だった。
「やったぞっ!」
魔法が直撃したのをこの目で見ていた国王の一人が声をあげて喜ぶ。
すると同時に周囲の兵士達の皆肩の荷が降りたようにほっと一息つく。
「さぁこれで奴は倒れたぞっ!」
康生を倒したことで異世界の国王は地上にいるリリス達を見下ろす。
だがリリス達は康生がやられたにも関わらず平然とした様子で地上を眺めていた。
「さてそれはどうじゃろうな?」
「――なっ!?」
リリスが毅然とした態度で言った瞬間、空中で大きな爆発音が響くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます