第583話 対処

「よしっ!いけっ!そのまま押し切れっ!」

 後方から人間の国王は必死に声を張り上げる。

 康生が苦戦し始めているのが分かったのだろう。

 今がチャンスと言わんばかりに国王は兵士達を指示てとどめをさそうとする。

 だが、


「ん……?」


 戦闘中の兵士達を見て国王はわずかな違和感を覚えた。

 国王の視線の先では兵士達は確かに康生に向かって確実に攻撃を入れていた。

 だがそれは兵士達だけの力ではなく――異世界人達との連携をはさんでのものだった。

「どういうことだっ……!」

 異世界人なんかと一緒に戦っているという事実に国王は初め憤慨するように表情を強ばらせた。

 だが国王はすぐ怒鳴ろうとするが口を閉じた。

 それは兵士達が異世界人と連携をとることで初めて康生に対して攻撃が入るようになったからだ。

 人間の兵士達だけでは確実にできなかったそれを、二つの種族が連携することによってできているという事実を前に国王は黙ってみていることしかできなかった。

「――くそっ」

 何も口を出せない代わりに国王は小さく舌打ちをするのだった。




(不味いな……)

 人間と異世界人達から集中攻撃をされている康生はふと嫌な予感を感じて冷や汗を流す。

 その嫌な予感の正体は、人間と異世界人達の攻撃の連携だった。

 今までは人間達と異世界人達の攻撃がバラバラにきていたからこそ攻撃をしのげていたが、敵全体が連携をとりはじめた今、人間と異世界人それぞれの利点を活かした連携攻撃に康生は苦戦を強いられていた。

「おらっ!」

 と康生が思考している隙をついて攻撃が繰り出される。

 康生は咄嗟に魔法を発動させて攻撃を回避するが、すぐに次の攻撃が繰り出される。

「ちっ!」

 鬱陶しいまでの攻撃に康生はいよいよ焦っていた。

「はっ!どうやらお前ももう限界のようだなっ!」

 異世界人の国王が焦りを見せ始めた康生を見て高笑いをした。

「それはどうでしょうかねっ?」

「ふっ、強がりをっ」

 康生は笑って誤魔化すが国王はそんな康生の気持ちなどお見通しという風に笑みを浮かべた。

(とはいえこのままだと本当にきついな。作戦としては上手くいってるんだけど、ここで負けてしまうのは少し癪だ)

 わずかに考えている間にも複数の魔法、複数の攻撃が繰り出され康生は一つ一つに対処している。

 そんな最中、康生は負けないために思考を回転させる。

(……そろそろ本気を出してみるか)

 敵が連携し、このままだと負けてしまうと考えた康生は全力で対処することに決めたのだった。

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