第581話 攻撃

「くそっ!怯むんじゃないっ!どんどん突撃しろっ!」

 両者が同時に吹き飛ばされて動揺が広がる中、人間の国王はそれでもめげずに進軍の命令を出す。

 たかが一人やられたぐらいで狼狽えるなと、そう言うように兵士達を奮い立たせる。

「そ、そうだっ!行くぞお前らっ」

 国王の命令により、指揮官クラスの兵士が皆を先導するように再び突撃していく。

 武装解除によって多少なりとも自信がついたのか、兵士達はそれを見て康生へと向かって次々と突撃していく。

「我らも負けぬぞっ!」

 そんな人間達の様子を見た異世界人達も負けじと康生を倒すために国王達も突撃していく。

 魔法に武器、それに大勢の者達が強大な力とともに康生へ向かっていく。

 康生はそんな両陣営の動きをじっくりと観察しながらようやくその体を動かして明確な戦闘態勢をとった。

「調子にのるなよっ!」

 先にたどり着いた人間の兵士達はそれぞれの武器を康生に向かって振り下ろしていく。

 流石国王直属の部隊で、空中でもその連携は乱れることはない。

 そしてそれは異世界人達も負けてはなかった。

 異世界人達は遠方からの魔法との連携までも完璧で、いくら国が違えど実力者である国王同士がうまく連携をはかって戦っていた。

「人間風情めがっ!」

 次々に魔法が放たれ、攻撃が繰り出されるそんな嵐のような空間。

 そんな中、一人一身に攻撃を受け続ける康生に向かって国王の一人が怒声をあげる。

「死ねっ!」

 そして人間達もまた同様に康生へと向かって怒りの感情をむき出す。

「ほらっ!お互いが足を引っ張ってるぞっ!」

 だが康生は決して表情を崩すことなく、ただただ楽しむように攻撃を回避し続ける。

 しかもその最中に両陣営の攻撃がお互いの邪魔をしていることを指摘するという所行さえもして見せた。

「調子にのりおってっ!」

 当然敵からそんなことを言われてはさらに憤ってしまう。

「くそっ!たかだか一人っ!」

 しかしそれだけの実力が今の康生にはある。

 流石に異世界人達も人間達もこのままでは勝てないと判断してしまう。

 だが少しでも勝率をあげるための方法なら存在することも同時に判明してしまう。

「くそっ!」

 そんな中、戦っている中で一人が大きく舌打ちした。

「もうどうにでもなれっ!」

 そして次の瞬間、その人間は康生の注意を引くように攻撃を入れる。

 康生はすぐにそれに対処するが、その瞬間に康生の死角から異世界人の攻撃が繰り出された。

「ちっ」

 その時、康生が初めて表情を歪ませるのだった。

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