第578話 段階

「やっぱりこうなりましたか」

 空中で繰り広げられる戦闘を見ながら上代琉生はエル達の元へと移動していた。

「そうね。康生には悪いけど、戦いを止める最後の手段として仕方ないわ……」

「ふっ、あいつも活き活きしておるからいいじゃろ」

 心配するエルを横目で見ながら、多勢の異世界人や魔法に囲まれながら活き活きとした表情で敵を倒していくのを見ながらリリスは笑いをこぼす。

「そうですね。確かに英雄様は戦っている時が一番活き活きしてる気がしますね」

「まぁ康生はいつも一人で考え込んじゃうから、ああやって元気に動き回っている方が康生にはあってるかもしれないわね」

 なんて呑気な話をしながらも、それでも三人は現在の状況を考えて次なる作戦への準備を始める。

「とにかくこうなってしまった以上、お互いの力がなくなるまで英雄様に頼るしかないですね」

「そうね。元々決めていたことにしてもやっぱり康生には申し訳ないけど」

 現在は戦いを止めるために、お互いの共通の敵を作って一時的に戦いを中断させている。

 その間にエルとリリスは次の説得のための準備をし、上代琉生は別部隊との連絡をとる。

「まぁ、それにしてもまさか奴か魔力暴走をものにするとは思ってもなかったがな」

「本当にそうね。康生にはいつも驚かされてばかりだわ……」

 準備をしながらもリリスは空中の康生を見ながら感嘆しながらため息をこぼす。

 そう。現在康生は大気や魔法から直接に再現なく魔力を吸収している状態だった。

 なんでも一度魔力暴走を経験した康生はコツさえつかめば魔力暴走をものに出来るといったのだ。

 そのコツを得るきっかけとしてリリスの魔力供給が必要だったのだ。

 そうして現在、康生は魔力暴走により一瞬で魔力を消滅させる力を得ることに成功し、今や半永久的に戦える力を手に入れたのだった。

「二人共すぐに準備して下さいね。恐らく敵が諦めるのは時間の問題です」

 そんな二人を見て上代琉生は準備をするように言う。

 現在の康生の圧倒的までな力を見せつけたことで、両陣営の士気が失われるのも時間の問題だと見たのだろう。

「うん、分かった」

「了解じゃ」

 上代琉生から指示を受けた二人は、すぐに両陣営を説得するための用意をする。

「という感じが今の状況だ。そっちも大丈夫だろうな?」

『うんっ、大丈夫だよお兄ちゃん!』

 すると同時に無線から奈々枝の声がかえってきた。

『今時雨さん達と合流したところだよ!』

「分かった。じゃあそっちは任せたぞ」

『了解っ!』

 そうして奈々枝達も裏で準備を進めながら、上代琉生達は作戦を次の段階へと移そうと始めた。

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