第574話 平和

「何を言ってる!貴様等そうやって我らをたぶらかそうとしても無駄だぞ!」

 異世界人達を上手く説得している最中、逆に人間達はただの小芝居だと一笑した。

 あくまでも康生達と人間達が手を組んでいると決めているようだった。

「何を言うか!我らとそやつらが手を組んだ覚えはない!そやつらはあくまで一時的に協力関係を結んでいるだけだ!」

「それを信じれるわけがないだろうが!我々にとっては貴様等は両方とも敵だ!」

 国王はすぐさま康生達との関係を否定するが、人間達はそれを信じる様子はなかった。

 確かに人間陣営からすれば異世界人達の話は全く信じられるものではない。

 異世界人だけではなく、康生達も先ほどの嘘の情報があったせいで全く信用されていなかった。

「分かってます。あなた達が我々を信用出来ないは」

 しかしエルはここで無理に説得することはしなかった。

「だからせめて、ここで話し合って下さい!戦うんじゃなくて、お互い話が出来るのだから言葉を交わして下さい!」

 だからこそエルは両陣営に訴える。

 こうしてわずかの時間だけどお互いは言葉を交わしたのだ。

 会話は出来ることが証明された。

 ただ敵だから攻撃するのではなくて話し合いをすることをエルは頼み込んだ。

「何を言うかっ!化け物共と話すなどっ……!」

「それは言うならこちの台詞だっ!」

 だが両陣営はエルの言葉にすぐに反発した。

 わずかしか話してないが、やはり両陣営に対する溝は深いものだ。

「だったらせめてここで理由を話して下さい!どうして戦うのか!どうしてお互いが敵対視しているのかを!」

 しかしそれでもエルは諦めずに説得を試みようとする。

「そんなのは決まっている!奴等が化け物だからだ!」

 すると人間の国王が真っ先に言葉をぶつける。

「ふっ、低脳な発言だな!流石人の王と言ったところかっ」

「何だとっ!?」

 人間の国王の発言に異世界人の国王達はそれぞれ嘲笑する。

「ま、待って!詳しく話を聞かせて!」

 だがその流れを断ち切るようにエルは再び人間の国王に投げかける。

「どうして化け物だから敵なの?私も異世界人だけどあなた達は私達と協定を結んだはずでしょっ?」

「そんなものは結んでおらん!ただあの時は利害の一致があったから話を聞いたまでにすぎない!」

 だが国王はあの協定は一時的なものだと主張する。

「それでも話し合ったでしょ?なのにどうして異世界人達とも話し合うことが出来ないのよっ」

 エルはただただ平和を願うように嘆くのだった。

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