第573話 信用
「皆さん!これから私の話を聞いて下さい!今回の件について全て私達から説明させていただきます!」
両陣営に動揺が広がる中で、エルは拡声器で呼びかける。
だが当然静かになるわけではなく、両者とも口々に文句を言い始める。
しかし上代琉生の指示でエルはそこからさらに声を張り上げた。
「今までの攻撃!人間達に向かって放たれた攻撃は全てこの異世界人達がやったの!そしてこの異世界人達は国王達に紛れて潜んでいたのよ!」
混乱する最中に、エルは真実を叫ぶのだった。
「そんなこと信じられるかっ!そやつらは我の部下だぞ!」
だがエルの言葉を聞いた国王の内一人が、自らの部下が裏切り者にされたことに対して反論した。
それは他の国王達も同じのようで、様々な国の部隊から裏切り者を捕らえたというエルの言葉を全く信じる様子はない。
「ふざけるな!そんな都合のいい話信じられるか!やはり貴様等は異世界人と手を組んでいるのだろう!攻撃の罪をそやつらだけに押しつける算段なのだな!?」
さらに人間の方からも、エル達と異世界人達が手を組んでいると主張して全く信用されるようはなかった。
「それでは国王達に尋ねたいことがあります!先ほどの人間達への攻撃は、あれは皆様が指示をしたものですかっ?」
「違う!」
そんな中、エルの問いかけに国王達は一斉に否定をする。
「じゃあ確実に国王達を裏切ったのは確かですよね?先ほどの攻撃の際、この者達がアイコンタクトを取り合い、一斉に攻撃をしたのは確かです!」
「し、信用できぬ!お前達が我らを騙そうとしているのではないかっ!」
上代琉生達の監視の元で行われた攻撃は、確かに今捕らえた者達だった。
だが流石にエル達の証言だけでは信じてもらえない。
「証拠ならあります!これは魔法を使った者を感知する魔道具です!」
「うっ……」
そう言って上代琉生が魔道具を国王達に見せる。
異世界人達だからこそ、その魔道具がどれだけのものか分かっている。
それを出されたからこそ、国王達は反論出来ず口を閉じていた。
「証言なら私もしよう。我の兵の中にも裏切り者が存在した。おそらく全ての国王の元に潜んでいると思われる」
すると国王達が言いよどむ中。クロスだけが一人康生達に味方するように宣言した。
「魔道具を出されてしまっては我らも何も反論できまい。それに彼らも我らの中に裏切り者が潜入しているからこそ先ほどは騙すようなことをしたのだろう」
さらにクロスは先ほどの誘導に関して都合のいい言い訳まで述べた。
「ぐっ……確かにそうかもしれないな……」
クロスが最初に言い出したことで周りの国王達も徐々にだが裏切り者の存在を認め始める。
「何を言ってる!貴様等そうやって我らをたぶらかそうとしても無駄だぞ!」
異世界人達が徐々に信用していく中、取り残されていた人間側はエル達に対して憤りの表情を見せていた。
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