第572話 混乱

「私達は今完全に武装を解いた生身の状態です!あなた方とは戦うつもりはないんです!だからどうか話をっ……」

 エルがそこまで言った瞬間、異世界人の方から人間達へ向かって魔法が放たれた。

「「「なっ!?」」」

 突然のその攻撃に対して人間達は驚愕の声を漏らすが、それは異世界人達も同様だった。

 いきなり放たれた魔法はたた真っ直ぐ人間達の元に向かって飛んでいく。

 あまりにも突然のことに両陣営は全く反応出来ずにいた。

 それほどまでに正確で静かに、速いスピードで向かっていた。

 だが魔法の威力はそこまで大きなものではなかった。

 しかし今の問題はそんなことではなかった。

「康生っ!」

「おうっ!」


 咄嗟にエルが叫ぶのと同時に、康生は返事と一緒に体を動かしていた。

 突然のことで両者とも反応出来ずにいたその攻撃を、康生はあらかじめ知っていたかと言わんばかりの反応速度で向かっていく。

「はっ!」

 威力はそこまでのものじゃなかったので、反応できれば防ぐことは容易かった。

 本当に一瞬の出来事だったが、康生はすぐに魔法を防いだ。

「貴様等っ!やはりっ!!」

 だが攻撃が防がれ、ようやく脳が現状を理解した時、国王は怒りに任せてそのまま異世界人の方へと突撃していきそうになる。

「待てっ!」

 だがそれを見た康生は、魔法を防ぐのと同時に体勢を立て直して地面に向かって大きく拳を突き立てる。

 そのわずかな攻撃で地面が振動し、亀裂が入る。

 あまりにも強力な攻撃に人間達以外にも、異世界人達も大きく動揺し戸惑っていた。


「裏切り者を発見したっ!」


 そして動揺が静まるより先に、どこからか拡声器によって拡大された声が響きわたる。

 人間達も異世界人達も、全く状況が分からずままただただ混乱していた。

「任せろっ」

 だが康生にはその言葉に意味が伝わっているようで、声を聞いた康生はすぐに移動し数人の異世界人を捕まえて再び中央に戻る。

「な、何しているっ!」

 様々な国の異世界人をさらった康生に対して、国王達はすぐに文句を言う。

 状況が読み込めてないが、それでも突然兵士をとらえすぐに怒りを示しているようだった。

「こいつらは国王達を騙した裏切り者達です!先ほどの攻撃も全てこいつらの責任です!」

 国王達がすぐにでも兵士を取り戻そうと動き出すよりも前に、突然異世界人達のがいる中から上代琉生が出てくる。

「これで役者が揃った!後はよろしくお願いしますよエルさんっ!」

 不可解な現状が何度も続く中、ただ全てを知っている康生達がただ冷静に全体を見渡す。

「皆さん!これから私の話を聞いて下さい!今回の件について全て私達から説明させていただきます!」

 そうして混乱している最中、エルが再び声を張り上げるのだった。

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