第571話 武装

「皆さん!私の名前はエルです!この状況は人間と異世界人。お互いがお互いのことを知り、理解するためにこちらにお呼びさせていただきました!」

 左右から両陣営が集まったことを確認したエルは、すぐに拡声器を使って声を放った。

 皆動揺している最中、まず大きく注目を集めるためだ。

「一体どういうことだ!裏切り者を捕まえたのではないのか!?それにその人間共はなんだ!」

「理解するだとっ!貴様等まだそんなことを言っているのか!我々が化け者共と理解することが出来るわけがなかろう!」

 エルの言葉を聞いて一瞬静まりかえるが、両陣営からはそれぞれ怒声が飛び交ってきた。

「むっ?さてはお前らは我々の地に侵攻しようとしてきた人間共だな!?」

「本当だ!奴等、例の人間共だ!?まさかリリス達は我らを裏切ったというのか!?」

 先ほどまで異世界に攻め込もうとしてきた人間達の姿を見た国王達は一斉にどよめき、そしてリリスが裏切ったのだとすぐに思いこんでしまう。

「貴様等こそ我々に対して攻撃を仕掛けてきただろ!我々はすでに帰る時だった!なのに貴様等が先に攻撃を仕掛けてきたのだろう!」

 だが異世界人の言葉を聞いて、国王はすぐに反論した。

「何を言うっ!元はと言えば貴様等が侵攻してきたのが原因だろうがっ!」

「結局はしてないだろうが!それなのに貴様等は我々を排除しようとした!」

 そして当然のように異世界人と人間達は言い争いになる。

 そうして今すぐにでもお互いに攻撃を仕掛けそうな雰囲気にまでなってしまう。

「待って下さい!」

 だがそれを止めるため、エルは精一杯を声を出す。

「まずは我々の説明を聞いて下さい!人間の皆さんはまず誤解しています!あの魔法を放ったのはここにいる方達ではありません!」

 エルはまず人間達に先ほどの攻撃の誤解を解こうとする。

「そんなこと信じられるかっ!」

 だが国王は信じる様子がなく、真っ向から否定する。

 何故なら康生達はすでに人間を裏切っている。

 だからこそ信用度は全くない。

「何を言うか!図に乗るなよ人間共!貴様等を殺すことなんてわざわざあんな姑息な真似をしなくとも出来るわ!」

 そして国王の誤解が気にくわないのか、異世界人達はすぐに言葉をぶつける。

「ほらみろ!奴等は我らを殺すつもりなのだ!」

 その言葉により、国王はもう異世界人の国王達が攻撃したのだと思いこんでしまった。

「だからお願いです!どうか話を聞いて下さい!」

 再び口論が爆発しそうになった時、エルは咄嗟に声を出す。

「私達は今完全に武装を解いた生身の状態です!あなた方とは戦うつもりはないんです!だからどうか話をっ……」

 とエルがそこまで言った時、異世界人がいる方か小さな爆発音が響く。

 そして次の瞬間、人間達のいる方へ向かって炎の魔法が放たれるのだった。

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