第570話 理解

「国王様!前方に人影を発見しました!」

 真っ直ぐと進軍している人間の兵士達は、前方に見えた小さな人影を見つけ国王に報告を入れる。

「そうかっ、きっとそいつらが異世界人に違いない!奴等が戻ってくる前にすぐに迎え!」

「はっ!」

 リナさん達から逃げ切った国王は、すぐに追っ手が来ないように足を進める。

 前方の人影はそんな国王達に気づいているはずだか、全く動く気配がない。

「よし!気づかれないうちに行け!」

 こちらに気づいてないことをいいことに国王はすぐに異世界人を捕らえるため急いで距離を詰めようとする。

 だがあまりにも焦りすぎたせいか、国王達はもう一つの影に気づくことはなかった。

「捕らえよっ!」

 国王はそう言って人影を目視できる距離まで移動した。




「人影を発見したぞ!おそらくあれが裏切り者共か!?」

「いやまだ分からぬ!とにかく急いで回収するぞ!リリス共がいない今、我らが先に身柄を拘束するぞ!」

 異世界人達に前方に見える人影を見て、すぐにそれを裏切り者と思いこんだ。

「そうだな。これ以上奴等に貸しは作ってはおられん。この問題は人間などの力を使わず我々だけの力で終わらせるぞっ!」

 今までリリスの仲間達に散々翻弄され、そして裏切り者を見つける手柄をとられてきたからか、国王達それぞれ焦りの表情を浮かべていた。

 今まで圧倒的有利な立場であったはずの異世界人であるが、先ほどの戦いを見て人間と異世界人の力の均衡が大きく変化を見せていることに皆焦っているのだ。

 だからこそリリス達の国にはこれ以上貸しを作るわけにはいかないと、力を借りるわけにはいかないという心意気で皆必死になっていた。

「国王様!報告が!」

「なんだ!」

 しかしそんな時に、前方で進行している兵士が国王達の元へ報告を持ってくる。

「前方に大勢の影が!」

「くそっ、おそらくリリス達のか。ええいっ!先をこさせるな!我々が先に裏切り者を捕らえるぞ!」

 前方からやってくる大勢の大軍を見て、異世界人達は人間に手柄をとられないよう必死にスピードをあげる。

「奴等にこれ以上やられてたまるかっ!」

 そんな怒声の元国王達は三つの人影がある元へ向かうのだった。




「「なっ!?」」




 そうして同時刻、地上に二つの種族の声が響きわたった。

 真ん中に見える人影を左右で挟むように、それぞれ人間陣営、異世界陣営がお互いに足を止めていた。

 お互いがお互いの陣営を見ながら驚いたように、そしてすぐにその表情を怒りに染めていく。

 まさに一触即発の状況。

 そんな中、お互いに挟まれている三人の人影の内、一人が拡声器をもって呼びかけた。


「皆さん!私の名前はエルです!この状況は人間と異世界人。お互いがお互いのことを知り、理解するためにこちらにお呼びさせていただきました!」

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