第568話 突破
「くっ、そこの奴等は下がれ!ザグ!向こうのカバーを頼む!」
「おぅっ!」
現在リナさんとザグ達は人間の兵士達と戦闘を繰り広げていた。
といってもこれは戦闘ではなく一方的な攻撃だった。
ザグ達は宣言通り人間相手に手を出すことはしなかった。
そのためひたすら防戦一方の戦いは相当な苦戦を強いられていた。
「絶対にこいつらをこの先に通すなよ!」
「わかってらぁっ!お前こそ周りを見るばかりじゃなくて自分に集中しろ!」
「分かってる!」
お互いとにかく言葉を張り上げながら必死に人間達の攻撃を耐え続けていた。
兵士達には盾を容易してあるが、二人は盾を持たずに戦場を駆け回っていた。
本来ならリナさんは空中戦闘が得意なはずなのに、攻撃するなという制約から地上で防ぐしかなく相当な苦戦を強いられていた。
「くっ!くどいぞ!貴様等の負けは決まってる!その先に裏切り者がいることはもう分かっているんだ!素直にここを通せ!」
「そういう訳にはいかねぇんだよっ!」
そんなザグ達の態度に苛立ちを隠せない国王はただ苦言を呈す。
国王の兵達も流石に前回の戦闘での疲れが溜まっているからか、魔力を使う力は残っていないようだった。
それでも異世界人に対する恨みから兵士達は動いているが、魔力以外にも身体的な疲れによってこちらも苦戦していた。
「くっ!これならもっと回復しておけばよかったっ!」
疲弊している兵士達を見ながら国王は小さく舌打ちする。
連戦ということは国王も承知している。
ただ待機している最中に、エルにいくらか回復してもらったことで多少は戦えている状況だった。
兵士達はそんなエルの行動があったからこそ、現状の目的は康生達ではなく異世界人を狙っているのだ。
だがこれ以上長引けばどうなってしまうか分からない。
今はリナさんやザグのおかげで被害は出ていないが、それでも長引けば長引くほど確実に被害は出てくる。
それが分かっているからこそリナさん達はとにかくがむしゃらに戦場を駆け回っている。
「くそっ!どけ!今はお前達に用はない!」
「ぐっ!」
とうとう苛立ちから国王自ら戦場に立ち、護身用の銃を撃ち始める。
しかもそれがザグの体に直撃してしまう。
「ま、まだまだっ!」
だがザグの体が頑丈のおかげでわずかのところで耐える。
だがそんな隙をついて兵士達が一点突破を狙って突き進んでいく。
「ザグっ!」
リナさんはすぐにフォローに向かおうとするが、一度空いてしまった穴は埋めることが出来ず、人間の兵士達は真っ直ぐに突き進んでいく。
「はっはっはっ!これで終わりだっ!皆の者行くぞ!」
国王はようやく突破出来たことに声をあげて喜び、リナさん達を無視して先に進んで行くのだった。
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