第567話 場所
「向こうで戦闘が始まったようだな」
「うん、そうだね」
ザグ達が人間達と戦闘を始めた報告を康生達は受けた。
「とうとう始まったな。後は異世界人の方じゃが……」
人間達の動きはつかまったようで安心だが、問題は異世界人達の方にあった。
「今はクロスさんや奈々枝が協力しているから信じるしかないな」
異世界人達は現在バラバラに行動している。
それをまとめて集めなければいけないため、奈々枝がクロス達と共に異世界人の行動を操作している最中だった。
「俺達はここで待つしか出来ないんだな……」
そして康生達の仕事は現在、信号の魔法を放つだけだった。
それによって異世界人にも人間にも康生達の位置を把握させるという目的なのだ。
「仕方ない。そこは適材適所じゃ。その分お主は後々の役目を全うすればいいだけじゃ」
「そうですね」
そう言って康生は後々のためにしっかり体を休ませるのだった。
「くそっ奴らめ!嘘をついたな!手柄を全て奪い取るつもりかっ」
「やはり奴等は信用すべきではない。一度国へ帰ってもう一度話し合う必要があるな」
「うむ、我もそう思うぞ」
荒野を進みながら国王達はそれぞれ康生達に対する愚痴をこぼす。
あれから魔法の信号弾を見つけた異世界人達の元に、裏切り者が全て見つかったという報告が入った。
上代琉生の策略で反対方向に行かされていた異世界人達はそれぞれ康生達に対する不信感を募らせていた。
「ふぅ。君たちは本当に大丈夫なのか?」
そんな国王達を見ながらクロスは奈々枝に問いかけた。
「大丈夫です。これでいざこざをおしまいにします」
クロスの元にいた奈々枝は国王達の進軍を見ながら静かに答える。
「だがあの通り国王達は皆君たちに不信感を抱いている。そんな中でさらに君達の言葉を聞くなどと思わないがな」
「大丈夫です。作戦があるので」
この状況から康生達が道を切り開ける方法が全く思いつかないクロスはただただ心配する。
だが奈々枝はあくまでも大丈夫だと言うだけだった。
「もしかして私も君達に信用されてないのかな?」
そんな中、作戦の重要な部分を聞かされてないクロスは少し不審に思う。
「そんなことないですよ。ただこれ以上あなた達に迷惑をかけないためです。これは私達の問題なので、この結果どうなろうと私だけが責任をとるためです」
しかしそんなはずがなく、奈々枝は真っ直ぐにクロスを見つけて答える。
その様子を見たクロスはわずかに表情を緩ませた。
「そうか。なら私は安心して君達に任せるとしよう」
クロスはそう言って部下を連れて国王達と共に進行を始めた。
「はい。任せて下さい。私達がなんとかしてみせます」
奈々枝は最後にそう答えるとすぐにまた別の場所へと向かったのだった。
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