第566話 居場所

「いいかザグ!くれぐれも手は出すなよ!」

「分かってらぁっ!」

 敵――人間兵士達がザグ達を見かけて進行してくる中、ザグとリナさん達は攻撃する体勢ではなく、完全に身を守るための体勢を整えていた。

 ザグ達は異世界人達よりも早く動いた人間達相手に時間を稼ぐことが目的だ。

 だが決してこちら攻撃してはいけない。

 それが上代琉生から言い渡されたことだった。

 兵士の皆が盾の後ろに隠れ、完全に防御の姿勢をとっている。

 これも後々、人間達と対立しないためのことだ。

「しかし、相変わらず無茶を言いやがるぜ。殺してはだめの次は攻撃すらするなだっ」

「文句を言うならすぐに帰ればよかろう」

 だが敵の攻撃に抵抗せず、ただ守るだけというあまりにも規格外な指令にザグはたまらずため息を吐いた。

 しかしリナさんはそんなザグを慰めるわけではなく、ただ厳しく言い放つ。

「別に文句じゃねぇよ。いい修行になりそうだなって思っただけだぁ」

「ふっ、ならいいがな」

 なんて言葉を交わしている間にも人間の兵士達はこちらへと向かってくる。

 遠目で見ても敵はすでにこちらと戦闘する気満々のようだった。

「さて、まずは交渉しろと言われたが……」

 だんだんと近づいてくる人間の兵士達を見ながらリナさんは難しい顔を浮かべる。

「あいにく俺はそうのには向いてねぇよ」

「分かっている。……だが私もあまり得意という方ではないのだ」

 どうやら交渉事はザグだけではなくリナさんも苦手のようだった。

「まぁ、どのみちあいつに交渉は無理だろうよっ」

 見るからに伝わってくる殺気を感じたザグは笑みをこぼす。

「――そうだな。上代琉生もそれが分かって我々にここを任せたのだろうよ」

 人間の兵士達はすでに近くまで接近していた。

 完全にこちらを警戒している敵は、じっくりとザグ達を見ている。

「貴様等、どうやら我々を誘導したようだな」

「さぁ。私達は何も言ってない」

「ふっ、あくまでもシラをきるきか」

 リナさん達の前で国王が険しい表情で問いつめる。

「あくまで我々はお前達と戦うつもりなどはない。それにこちらから害を与えることはしない。だからここで戦うことを我々は望んでいない」

 ただリナさんはあまりのままを国王にぶつける。

「ふっ、ならこちらとしても好都合。それじゃあ正直に異世界人どもの居場所を吐いてもらうぞ」

 しかしあくまで再び戦うつもりはないのか、裏切り者の異世界人の居場所を尋ねてくる。

「居場所は我々も分かっていない」

「そうか。あくまでそう言い張るのか」

 リナさんは本当のことを言うが、やはり国王は信じる様子はなかった。

「それでは仕方ないな」

 そして国王はすぐに兵士達に命令を伝える。

 そうして人間の兵士達はリナさん達に向かって突撃してきたのだった。

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