第565話 軍団

「さて両陣営が動き出した。俺達も移動するぞ」

「うんっ、分かった」

「了解じゃ」

 人間陣営、異世界陣営それぞれが動き出したと報告が入った康生達は早速移動を始めた。

 康生が手元に持っている端末にはここ周辺の地図が表示されており、それぞれの陣営がいる位置がすぐに把握できるようになっていた。

「しかし人間はすごいの。まさかこんな道具を発明するなんて。これが魔道具でないことが未だに驚きじゃ」

「うん確かにそうだね。これも康生が作ったんでしょ?」

「まぁ、そうだね。といっても発明したのは俺じゃないんだけどね」

 スマホ端末に興味津々なエルとリリスに康生は苦笑いをこぼす。

「じゃがやはり上代琉生のとこの部隊はすごいな。まさか国王直属の部隊にバレぬよう尾行をしているとはな」

 そして同時にリリスは感心していた。

 なにせ今こうして両陣営の位置が把握できるのは全て上代琉生の隊員達のおかげだからだ。

 これによりそれぞれの動きを把握でき、作戦も格段と実行しやすくとなるというものだ。

「――さて、二人共そろそろ目的地につくよ」

 感心している姉妹を見て康生は呼びかける。

「うん、分かってる。ついにやるんだね」

「あぁ、この勝負で人間と異世界人の今後の命運が決まると思っていいじゃろう」

 そろそろ作戦が始まるということでエルとリリスわずかに緊張したように表情を堅くする。

「大丈夫。皆がいれば絶対に上手くいく」

 だから康生はそんな姉妹を励ますように肩をたたいた。

「うんっ、そうだね。皆がいれば、絶対に上手くいく。いや絶対に成功させないとね」

「そうじゃな。今更弱気になどなってならないな」

 そうして二人は改めて覚悟を決め真っ直ぐ目的地へと向かう。

「それじゃあそろそろやろうか」

 そして目的地へと近づいた康生は足を止める。

「うんっ、そうだね」

 エルが頷くのを見てリリスもゆっくりと頷いた。

 そうして二人は真っ直ぐ空に向かって手をあげる。

 次の瞬間、二人の手のひらから魔法の光が空高くあがる。

 そう。それは異世界人達の連絡手段として使われてるもので、なおかつ先ほど人間を攻撃したものと全く同じ色だ。

「――さぁ。やるぞ」

 作戦が始まったことを実感し、康生は頬を叩いて意気込むのだった。




「とうとう始まったなぁ」

「そうだな」

 エルとリリスが魔法を放ったのをザグとリナさんはいち早く発見する。

「さてそれじゃあ俺達もやるか」

「ふっ、怖じ気付くなよ」

「それはこっちの台詞だよっ」

 言葉を交わしたザグとリナさんはすぐに兵士達に指示を出した。

 そうして前を見つめて戦闘体勢をとる。

「さぁ、いくぞっ!」

 ザグが吠えると目の前から大勢の軍団が進行してくれるのが見えてくるのだった。

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