第563話 忠告
「――報告!人間の兵士達は進行を辞め、こちらへ引き返してきています!」
「そうか」
上代琉生の元に一つの無線が入った。
「敵を騙し誘導したとなると、大事なものは反対側にあると予測した結果か」
すでに康生達が嘘をついていることがバレてしまっていることが分かる。
「ついに来たか。それじゃあ我々も移動するか」
報告を聞いてリナさんが真っ先に立ち上がる。
「そうだな。それぞれ所定の位置に移動しよう」
「だなっ」
続いて康生とザグが立ち上がり、それぞれ部下達と共に移動を開始する。
「はぁ、ついに始まるか……」
そんな中、リリスが作戦の始まりに対してわずかにため息をこぼす。
「何してるの。もうこうなった以上あとには退けないんだからね」
「分かっておる」
ため息をこぼすリリスを見てエルがすぐに声を掛ける。
戦うことは避けられないからこそ、皆覚悟を決めている。
「それじゃあ二人とも行きますよ」
そんな二人に向かって康生が声を掛けた。
「うんっ」
「あぁ」
わずかの人員だけを連れて康生達は所定の位置へと向かう。
そして反対側ではザグとリナさんを中心に大規模な部隊が編成されていた。
「無理だけはするなよザグ」
「分かってるよっ。エルに回復してもらえたんだ。もう体は十分に回復してるぜっ」
ザグはそう言って元気に体を動かす。
康生もザグもエルの治療によって完全といえるほど回復しきっていた。
これもエルの唯一の魔法能力のおかげだった。
「くれぐれも足は引っ張るなよ」
「はっ。それはこっちの台詞だっ。康生に勝つまでは俺は誰にも負ける予定はないからなっ」
「ふっ、ならいい」
そうしてザグとリナさんを中心とした部隊もいよいよ出発をする。
「さて、奈々枝。後の向こうの指揮は任せたからな」
「分かってるよ。お兄ちゃんこそ絶対に気をつけてね」
そしてそん中、上代琉生と奈々枝は二つの部隊の背を見ていた。
「くれぐれも絶対に無理はしないでね?お兄ちゃんは英雄様の次に危ういんだから」
「……そうか?」
釘を刺すように言われ、上代琉生はわずかに困惑する。
「うん、そう。お兄ちゃんは英雄様以上に一人で何でもやろうとするから。だから絶対に無理はしないでね。この戦いでは誰一人欠けてはいけないんだから」
「分かってるよ……」
だから上代琉生はそんな妹の忠告を素直に聞き入れた。
「それじゃあそっちは任せたぞ」
「うんっ」
そう言って奈々枝はザグ達の方へ、そして上代琉生は康生達の方へ向かって進み出した。
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