第560話 回避


「ひとまずこれで皆揃いましたね」


 あれから、エル達が康生達に合流した流れで上代琉生や奈々枝達も合流をすることにした。

 無線で会議をしても良かったが、前のように電波障害や盗聴の恐れがあるためだ。

「そうだな。それで今後はっ……いたたっ」

「ちょっと動かないでよ康生っ」

「そ、そんなこと言ったって……」

「そもそも康生が無茶するから悪いのよっ」

「うぅっ……」

 会議の進行をしようとした康生だったが、すぐに奈々枝の治療による痛みで止まってしまう。

 リリス達が連れてきた異世界人に回復をしてもらった康生だったが、それでも完全ではなかった。

 なので今はエルの手によって完全に体を回復するために治療を受けているのだが、中々に痛みが伴ってくる。

「ほらっ、ザグもじっとしててよっ」

「お、おうっ」

 そして康生と同じく重傷だったザグもまた必死に痛みを耐えながら治療を受けていた。

「ふっ、相変わらずお前は乱暴じゃな」

「リリスは黙ってて。そもそもリリス達がちゃんと康生を治せてないのが問題なんじゃない」

「お前の力と比べられては何も言えん。これでもかなりしっかりやったのじゃ」

「これでしっかりねぇ」

「すとっぷ」

 エルとリリスが口喧嘩を始めようとした瞬間に上代琉生が慌てて止める。

 こうして皆が集まって気が緩んでいるだろうが、あいにく今はそんな時間はない。

「そうですよお嬢様方。お二人が会えて嬉しいのは分かりますが、今はあとにして下さい」

「「嬉しくないわよっ」」

 リナさんの言葉に思わず二人の言葉がかぶる。

「それじゃあ話し合いを始めますよ」

 そうして上代琉生の元、今後のことについての話し合いが始まる。

「ひとまず異世界人側は西へ向かって進んでいます。ただそれぞれの国ごとに別れて行動を共にしているのでそれが少し厄介になるかもしれません」

 まずは奈々枝が異世界人側の状況を説明する。

「だけど今は味方になってくれる人達もいるから少しは状況は把握しやすいと思う」

「そうだな。それに味方に裏切り者がいると分かっている以上、そう簡単に輪を乱す行為はしないだろうな」

 二人の報告を聞き、ひとまず異世界人側は安心してはいいようだった。

 だが問題は人間側だった。

「とりあえず東に進んでいったが、いつ別の場所に行くか分からんぞ。それに我々は信用されている訳ではない。だからそんなに時間を稼げないと思っていた方がいい」

 リナさんは人間側の動きを冷静に分析する。

「そうですね……。ひとまず人間側の動きに注意しながらなんとか状況を打破する方法を考えましょう」

 そうしてその場にいる者たちは戦争を回避するための作戦会議を始めたのだった。

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