第558話 言葉

「止まって下さいっ!」

 康生達はようやく人間の兵士達に追いつくことができ、すぐさま正面で立ちふさがった。

「敵かっ!?」

 兵士達はすぐに康生達を見つけると武器を構えて立ち止まる。

「待て!俺たちは敵じゃない!」

 武器を構えられた康生はすぐに手をあげて無害であることを証明する。

「なんだ貴様等か」

 すると康生達を見つけた国王がゆっくりと前に出てくる。

 流石に警戒はしているからか、左右には護衛を何人も連れている。

「おっ、貴様は康生じゃないか。やはり父親そっくりに育っているな」

 康生を見つけた国王は何やら懐かしそうに康生を見る。

 恐らく康生の両親達とは知り合いなのだろう。

 両親の話をされた康生は一瞬だけ、殺された恨みがわき上がったが今はそんなことをしている暇はないとすぐに心を鎮める。

「お願いです。どうかすぐに後退して下さい。国へ帰るまでは俺達が護衛をさせてもらいますので」

 だから康生はすぐに国王に撤退するように頼む。

「敵は俺達がなんとかします」

 とにかく異世界人と対峙させてしまっては駄目だ。

 康生達はまだぎりぎり攻撃されないが、もし異世界人と出会ったら恐らく問答無用で攻撃するだろう。

 先ほどの攻撃で殺されかけたので当然のことだ。

「勘違いするなよ?貴様等のことは信用などしていない。ただ今は休戦しているだけだ。だから貴様が誰と戦おうと知ったことではない。我らは我らの敵と戦うのみだ」

 だが国王の意志は強く、やはり異世界人に対する恨みは拭い切れていないようだった。

 エルのおかげで康生達に敵対することはなくなったようだが、それでもこのまま粘り続けていれば自分達も攻撃されかねない。

「話を聞いてくれ!今戦えばお互いの被害は計り知れないものになるぞ!それこそ昔の戦争以上だ!私達はそれを防ぐために動いている!だからお願いだから今は手を引いてくれないかっ!?」

 見かねたリナさんはすぐに頭を下げる。

「知るかっ!貴様等の事情など知らぬ!我々は敵をただ倒すのみ!それだけだ!」

 だが一向に話を聞いてくれる様子はなかった。

 すでに戦う意志は覆られないのか、康生達を無視して進行を始めようとすらしていた。

(くそっ……どうするっ?無理矢理止めればそれこそ戦闘になってしまう。だがこのまま話し合いだけじゃ絶対に聞いてくれない……。どうすれば……)

 康生はどうしようもない状況に頭を抱える。

 だがそんな時に康生の元に一つの無線が響きわたった。


『皆さん聞いて下さい!敵部隊は現在東側にいます!ですので国王達を絶対にそちらに行かせないようにして下さい!』


 上代琉生の言葉が辺り一帯に響いたのだった。

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