第555話 移動
『大丈夫ですよ英雄様。エルさんは無事です』
康生が焦っていると上代琉生からの無線が届いた。
『あの攻撃による被害は今のところありません。だから英雄様達はまだそこから動かないでください』
「そうか……」
ひとまず被害がないという報告を聞いて康生達は安心する。
「それにしてもどうしてお前がそっちにいるんだ」
『念のため周囲を捜査していただけですよ。だが事態は非常にまずいことになりました』
「何があった?」
被害はないということで安心していたが、上代琉生の口調からはかなりの焦りが感じられた。
『さっきの攻撃で人間の兵士達がとうとう暴走した。異世界人は敵だと。すでに敵を倒すために再び進行を始めてしまった』
「なんだとっ!?」
その報告を聞いて康生は声をあげる。
「くそっ……やはり敵の狙いはそういうことだったのか……」
そして同じくリナさんは頭を押さえて苦しげな表情を浮かべる。
被害が出ていないにしろ、先ほどの攻撃は明らかに人間達を狙ったものだ。
流石に康生達が攻撃をしたとは思われなかったことは少し安心だが、それにしても状況は非常にまずい。
「待て。今は各国の異世界人達の部隊が来ているのだろ?もしそれと出くわしてしまえば……」
とここで時雨さんが遅れて敵の目的に気づく。
「あぁ。恐らく戦争になりますね。俺達が今までやってきた戦いが全て無駄になります」
異世界人と人間の全面戦争を止めるために動いてきた康生達だったが、ここにきて戦争が起きようとしていた。
『ひとまずエルさんは避難させました。今隊員達と拠点に向かっているはずです。俺は今後奈々枝と協力して異世界人達にすぐに撤退するよう誘導しますので皆は出来る限り人の兵士達の進行を遅らせてください』
「分かった」
上代琉生はそれだけ言うと無線をすぐに切った。
恐らく悠長に話している時間はないのだろう。
とにかく異世界人と人間の戦争を防ぐためにもここで踏ん張らなければいけない状況だと誰もが理解する。
「くそっ、結局俺達が頑張った成果はなんだってんだよっ!」
ザグはそんな状況を前に思わず愚痴をこぼす。
「そんなこと言っている暇はないのじゃ。とにかく動ける者ですぐに人の兵士どもの元へと行くぞ!なんとしても国王達と出会うのは避けねばならんっ!」
「そうだなっ。じゃあ俺はすぐに行ってくるっ」
今度こそ康生は魔法を行使してすぐに兵士達の元へと移動しようとする。
「待てっ、一人で行くな!お前一人では止められない!」
「くっ……」
しかしすぐにリナさんに呼び止められて康生は足を止める。
「こんな状況だが落ち着け。こっちが焦っていると冷静な対応など出来ないぞ」
「分かりました……」
そうして康生達はすぐ様兵士を集めて人間の兵士達の元へ移動を開始するのだった。
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