第554話 通信

「兵士達が……。――まさかっ、敵の狙いって……」

 敵がわざわざ人間の兵士達がいる方向へ攻撃を放った意味を康生はすぐに理解した。

「あぁ。そういうことだろうな」

 同じく康生の隣にいたリナさんも敵の思惑を今更ながらに理解する。

「こうして異世界の国王達が軍隊を引き連れて出てきているのだ。そんな中、元々異世界を攻めようとしていた人間共が関われば……」

「確実に争いになりますね。しかも今争いの原因は放たれた」

「そういうことだ」

 敵がやろうとしていたことを察した二人はすぐに地上へ降りる。

「すぐにエルと通信をつなげてくれ!」

「我々はすぐに兵を出すぞ!」

 リナさんが兵士達を連れ、人の兵士達をの安否を確認しようとする。

 ここで無事にエルと通信がつながって安全が分かっても、またいつ敵の攻撃がくるか分からないのでその護衛もかねるようだ。

「エルっ!エルっ!応答してくれ!エルっ!!」

 だが康生がいくら無線で呼びかけようがエルから返事が返ってくることはなかった。

「くそっ!俺がすぐに状況を確認してくるっ!」

「待てっ!今お主は魔力を使ってはだめじゃっ!」

「でもエルがっ!」

 すぐにでもエルの元へと向かおうとした康生だったが、リリスが寸前のところで呼び止める。

「それにこの拠点もいつ狙われるか分からない状況なのじゃ!今戦力であるお主がいなくなれば確実に不利になる!」

「それはっ……」

 確かにここで向こうへと向かってしまえば、背後から不意を突かれて攻撃されかねない。

 とはいってもあそこにはエルと数人の隊員しかいない。

 あの攻撃があたってないにしろ、人間達は絶対にエル達異世界人からの攻撃に反発を起こすはず。

 だからこそ色んな意味でエル達の身の危険が危ないのだ。

「そうも言ってられねぇだろ。ここは任せろ。だからおめぇは早くあいつの元へ行ってやれ」

 そんな中、一人の声が聞こえる。

「ザグっ!?お前もう大丈夫なのかっ!?」

 声がした方を振り向けばそこにはザグが立っていた。

「あぁ、安心しな。お前程度の攻撃じゃ俺は死なねぇよ。だから拠点のことは俺に任せろ」

「じゃ、じゃがザグ!お主の体も相当危ないはずじゃっ!そんな体で次戦えば確実に死んでしまうぞっ!?」

 拠点を守ると言ったザグだが、リリスがすぐに反発する。

 それはそうだ。康生との激戦の後にようやく目が覚めたのだ。

 いくら回復魔法で回復したにしろ、体のダメージは確実に蓄積している。

 それは康生も同意見で、ザグの容態を見て興奮していた頭がわずかに冷える。

「でも、すぐに行かないと……」

 だけど康生はそれでもエルの身を案じて声を漏らす。


『大丈夫ですよ英雄様。エルさんは無事です』


 そんな中、康生達の元に一本の通信が入ったのだった。

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