第553話 直接
「――さて、準備は整った。それじゃあ始めようか」
一人の異世界人がそう呟くと同時に空に向かって一発の魔法が放たれた。
魔法は空高くまであがるとやがて地上へ落下していく。
まるで隕石が落ちるようにその魔法を真っ直ぐに地上へと落ちていった。
「さぁ、戦争の始まりだっ!」
「報告がありますっ!ただいま正体不明の魔法攻撃を確認しました!」
拠点で休んでいた康生達の元に一人の兵士が慌ててやってくる。
「あぁ、勿論すぐに気づいた」
リナさんは立ち上がって空を見上げる。
空には一つの赤い塊が飛んでいた。
「やっぱりまだ敵が……。俺が打ち落としてきましょうか?」
打ち上げられた魔法を見た康生はすぐに迎撃しようかと提案する。
「いや大丈夫だろう。あの魔法は本来信号目的に使われている魔法だ。恐らく国王達の軍が派遣され、敵も焦っているのだろう」
「そうなんですか……」
どうやらあの魔法は異世界人達の兵士達の間での通信手段のようだ。
だからリナさんはすぐに敵が交信をしようとしているのだと考えた。
「じゃが、あの色は少し変じゃないか?」
しかしリリスは打ちあがった魔法がうっすらと光り輝いていることを指摘する。
「そうですね。確かにあれはあまり見たことはありませんね。ですが元々国籍も分かってない状態ですから……」
国が違えば通信手段は違ってくるのだろう。
しかしリリスの言うように光り輝くものは見たことがないリナさんはわずかに不審がる。
何か起こる前に対処しておいた方がいいのだろうかと考えていた。
「んっ?」
だが次の瞬間、真っ直ぐ打ちあがっていたその魔法は角度を変え、斜めに向かって飛んでいく。
その速さはとても速く、康生ですらここからそれに追いつくことが叶わないほどだ。
「攻撃だっ!」
すぐにあれが攻撃魔法だと気づいた康生は拠点を守るように空に飛ぶ。
遅れてリナさんもずに康生の後を追うが、例の魔法は康生達の拠点とは別の方向へと向かっていく。
「ここで狙いじゃないのか?」
てっきり拠点が攻撃されるのかと身構えていた康生だったが、遠くに飛んでいく魔法を見て呆気にとられる。
「ま、待て!あの方向はっ!?」
だがリナさんは魔法が飛んでいく方向を見て何かに気づいて大声をあげた。
その直後、地面で落ちていった魔法が爆発音を響かせた。
「あっ、あの方角はもしかしてっ……」
爆発音がした直後に康生は遅れて何かに気づく。
「あぁ……。あっちは人間の兵士達が待機している場所だ」
リナさんは力なく呟いたのだった。
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