第552話 協力

「いいのか奈々枝。国王達に捜索を任せて」

 クロスへ指示を出し終えた奈々枝に向かってリナさんは心配するように尋ねる。

 敵がどこに潜んでいるか分からない以上、警戒するにこしたことはないのだろう。

「安心して下さい。皆さんには我々の隊員達を見張りにつけます。それで何か怪しい動きをする者がいればすぐに拘束させます」

「なるほどな」

 もし敵がいるとすれば国王達の部隊を囮にとろうということだ。

 少なからず仲間がこれだけ捕まった以上、敵も何かしらのアクションを起こすかもしれない。

 だからこそ捜索について行くことで尻尾をつかもうというわけだ。

「俺はどうしたらいい?一度拠点に戻るか?」

 国王達が部隊を連れてそれぞれ捜索に向かう中、残された康生は今後のことを奈々枝に尋ねる。

「そうですねぇ。ひとまず拠点に戻りましょうか。それじゃあ後はリナさんよろしくお願いしますね」

「お前はどうするつもりだ?」

「私は国王達の動向を探ってきます」

 そう言って奈々枝は国王達と共に敵の捜索に出る。

「じゃあ戻りますか?」

「あぁ、そうだな」

 そうして残された康生とリナさんは兵士達を連れて拠点へと戻る。

 これで戦いが終わったとは思わないが、それでも康生はわずかながらに戦闘が終わったことにほっとする。

 皆にこれ以上心配をかけないためにも体には気をつけないといけない。

 だからこそ戦闘が続かないことを康生はわずかに喜んだ。




「そうか。国王達も捜索に加わったか」

 隊員から報告を受けた上代琉生は足を止めた。

 あれから康生達と別れて一人で捜索をしていた上代琉生だったが、敵の痕跡を見つけられずにいた。

「本当にこれで敵の攻撃が終わりなのか……?いや、そんなことは絶対にないはず。だったら……」

 上代琉生はわずかな情報から敵の真意を導きだそうとする。

 そして現在の状況を整理した上代琉生はあることを想像してしまう。

「いや……まさか……。この状況で……?」

 上代琉生はみるみるうちに表情を曇らせてすぐに足を進めた。

「取り越し苦労になればいいがっ……!」

 珍しく焦るように声を出しながら上代琉生はまっすぐに地上を駆けていったのだ。




「安心して下さい!戦闘はもう終わりました!」

 人間の兵士達がいる中で、エルは一人叫んでいた。

 新たな敵が現れたことで爆発しそうになっていた敵兵達だったが、エルが必死にくい止めていたおかげでなんともならずにいた。

 皆、戦闘が終わったということで少しは落ち着いたようだった。

「だがいつまた異世界人共が襲ってくるか分からないのではないのか!」

 国王は不安そうにエルに訴えかける。

「大丈夫です!今皆で協力して周囲の警戒をしています!皆さんの安全は必ず守りますので安心して下さい!」

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