第551話 捜索
「君とは前々から話がしたかったんだ」
クロスと名乗った国王は康生を真っ直ぐ見つめる。
「俺と、ですか?」
康生は対峙する国王に萎縮する。
ザグが元いた国の国王ということもあって、どう接すればいいか分からずにいた。
「君とザグの試合を見た時から君には興味があったんだ。君のその力の所以についてね」
「所以……」
恐らく強大な力をどこで手に入れたのかを聞いているのだろう。
だが説明しようにも上手く説明することが出来ないし、どうしても長くなってしまう。
今はやることが多くあるのでそんな時間はないし、そう簡単に話すわけにもいかない。
だからこそどう断ろうかと康生は悩む。
「はっはっはっ、そう身構えなくていいよ。話せない事情があるのは分かってる。だから気にしないでくれ」
「は、はぁ……」
クロスの意図が読めないまま康生は困惑した表情を浮かべる。
「それにしてもザグは元気にしてるか?あいつは何も考えずにつっこむ性格だからな。君達に迷惑をかけてないか不安だよ」
「そ、それは……」
だがザグの名前が出た瞬間、康生は口をつぐむ。
あれから未だに目が覚めたという報告を受けてない。
恐らくはまだ眠っているはずだ。
自分のせいでザグをあんな目に遭わせてしまった罪悪感を思い出し、康生はクロスを前にして黙り込んでしまう。
「――ザグは元気にやってますよ」
そんな時、背後から助け船を出すようにリナさんが会話に入ってきた。
「そうか、ならよかったよ」
リナさんの言葉を聞きクロスは少しだけ安心するように表情を緩ませた。
「それとこんなところにいてよろしいのですか?すぐに先ほど手渡した異世界人達の調査をしなければならないのでは?」
「あぁ、あれは必死になっている奴らにやらせればいいだけのことだ。やりたい奴に任せるさ」
「そうですか」
どうやらリナさんとクロスは顔なじみのようだ。
「それで敵は本当にこれだけだったのか?」
「現状はそうみたいです。ですが、今仲間が調査をしているので恐らくは……」
「やはりそうだろうな。恐らく敵の数はもっといるはずだ。ならば我々の部隊も派遣させよう」
そう言うとクロスはすぐに部下達を集めさせた。
「それで我々はどこを捜索すればいい?」
「そうですね……」
捜索を手伝ってくれることは正直言ってありがたい。
だがリナさんはこの時、国王達の中に敵が混じっていることも考えていたので素直にお願いすることを躊躇ってしまっていた。
「そうですねっ、それじゃあ私が案内しましょうっ」
そんな中、いつの間にか来ていた奈々枝がクロス達に捜索のお願いをするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます