第550話 拘束

「――結局、拠点への攻撃はなかったな」

「そうだな」

 異世界人達との戦闘が始まった後、康生達は作戦通り左右に別れてそれぞれ異世界人達の部隊を撃破していった。

 円を書くように部隊を潰していった康生達と上代琉生達はやがて合流することとなった。

 だがその間、拠点に異世界人達が攻撃を仕掛けることはなかった。

 敵の戦力もそれほどのものではなく、連戦で疲れが溜まっている状況においても無事に戦うことが出来た。

「隊員からはまだ敵の情報はない。異世界に向かって重点的に調べさせているが、敵の一人も見つかってない」

「これで終わり……っていうわけではなさそうだな」

「そうなんですよね」

 康生と上代琉生はまだいるはずの敵を警戒する。

 やけにあっけなく戦いが終わってしまった現状に違和感を感じられずにいられないようだ。

「とにかくここで悩んでいては仕方ないだろう。とにかく捕らえた奴らと一緒に国王達の元へと向かうぞ」

「そうですよ。せっかく全軍率いて来てくれたみたいなんですから」

 悩んでいる二人に向かってリナさんと奈々枝が呼びかけてくる。

 異世界人達が攻撃しているということで、国王達がここまで来ているのだ。

 そして康生達が異世界人達を拘束すると同時に隊員からの報告を受けた。

 向こうは当然異世界人達の身柄をよこすように言ってきた。

 上代琉生はなんとか情報を吐かせようと試みたが、拘束した異世界人達は何も知らない様子だったので、引き渡しはすぐに返事に応じた。

「そうだな。それじゃあ俺は一旦抜けさせてもらう。少し色々と調べたいことがあるからな。だから奈々枝よろしく頼むぞ」

「もぉ、いつもこういうのは私に押しつけて〜」

「仕方ないだろ」

 奈々枝に文句を言われながらも、上代琉生は新たな調査をすべく隊員達を引き連れてどこかへと消えていった。

 残された康生達はひとまずこの場所で拘束した異世界人達と共に国王が来るのを待つことにした。


 しばらく待っていると遠くから国王達異世界人の姿が見え、康生達の前にたどり着くや否や謝罪を述べてきた。

「大丈夫ですよ。この人達があなた方とは関係ないことは分かっているので。むしろこうして軍を出してくれたことに感謝したいぐらいです」

 奈々枝は元々の社交的な性格もあってか、異世界人達の軍とすぐに打ち解けることに成功した。

 向こうも戦う気はないので、拘束した異世界人達はすぐに受け渡した。

「――君が康生君か」

 そんな中、康生の元に一人の国王がやってくる。

「俺はクロス。元ザグの上司だといえば伝わるかな?」

「ど、どうも……」

 突然声をかけられた康生は少し戸惑いながらも頭を下げる。

「君とは前々から話がしたかったんだ」

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