第548話 侵略

「どうやら向こうでも戦闘が始まったみたいだぞ」

「そうみたいですね」

 奈々枝達が異世界人との戦闘を始めた時、反対側から出発した上代琉生達もまた異世界人との戦闘が始まっていた。

 当然こちらも説得は試みたが、やはり聞く耳を持たずに戦闘が始まってしまった。

 敵の目的が分からないまま上代琉生は思考を張り巡らせるが、やはり敵の真意を探ることは出来ずにいた。

「どうする?お前だけでも先に行くか?」

「そうですね……。何人か隊員を連れて先に行きたいんですが……」

 そういって上代琉生はチラリと戦場をみる。

 敵の数はそれほど多くなく、今の戦力と同等程度のものだ。

 だが問題は、この場所にいる戦力がこの程度ということだ。

 しかもこちらは連戦に次ぐ連戦だ。

 地下都市からここまで、いくらか休憩があったにしろ兵士達の疲労はピークに達していた。

 しかも敵は魔法を駆使する異世界人だ。

 こちらにも異世界人がいるにはいるが、やはり人間の数の方が多い。

 だからこそこの戦場は苦戦を強いられている。

 ここでさらに隊員数人を連れて行ってしまえば本当に負けてしまいかねない。

 それにここを抜けても無事に敵を探ることは困難に思えて仕方なかった。

「せめて目的が分かればいいんですけどね……」

「奴らは我々を殺すことしか考えてないからな」

 お互い戦場で戦いながら会話を交わすが、先ほどから敵の殺気を強く感じ取っていた。

「とにかくまずは早くこの場所を制圧しましょう。少しでも拠点への負担を減らすために」

「そうだなっ」

 やはり結論は奈々枝達同様に敵の殲滅になった。

 そうして上代琉生達は敵の目的が不明瞭なまま、新たな戦闘を始めたのだった。




「侵略だ!これは異世界人が我々を滅ぼすために侵略してきたんだっ!」

 一方その頃、先ほどまで康生達と戦っていた国王達は攻撃を受けている拠点の映像を見て喚いていた。

 映像からは火の玉が立て続けに降り注ぐ映像が写っており、もしあれが自分達に向けられたらと考え冷や汗を流していた。

「これは戦争だ!やはり異世界人など我々の敵でしかなかったんだ!」

 国王の言葉に兵士達は皆うなずきを返す。

 皆、敵からの侵略を恐れ今すぐにでも対応をすべきだと声があがっていた。

「ま、待って!きっと何かの勘違いで攻撃しているだけなのよ!だからきっとすぐに戦いが終わるはずだから!だからお願い!こっちからは何も手を出さないで!」

 そんな中、エルは必死に兵士達に呼びかけてくい止めようとする。

 もしここで兵士達が手を出してしまえば、本当に異世界人と人間の大きな戦争になってしまいかねない。

 だからこそエルはなんとしてもここで止めなければいけなかった。

「そうは言ってもこれは明らかな侵略行為だ!このままだと貴様の仲間も全員死んでしまうぞ!」

 しかし国王は自らの危険を危惧して聞く耳をもってくれなかった。

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